M型PLA2Rは自己免疫疾患・特発性膜性腎症の主要標的抗原

謎は解けた?・・・というサブテーマ

Human Idiopathic Membranous Nephropathy — A Mystery Solved?
Richard J. Glassock, M.D.
N Engl J med. Vol 361: (1) 81-83 Jul. 2, 2009
50年以上まえに、David JonesがPAS・メテナミン銀染色で、膜性腎症のユニークな糸球体病態組織の特徴を見いだされ、”ネフローゼ性糸球体腎炎”の他の原因から独立して概念化された。
免疫蛍光・電顕研究にて、IgGの衝撃的顆粒状集積とelectron-dense depositが糸球体基底膜の外部(上皮下)側に沈着していることが判明し。この顆粒状のIgG集積はまず、循環血中の免疫複合体から野茂のであり、うさぎモデルでの糸球体腎炎(chronic serum sickness)にも認められた。

1959年、Heymannらは膜性腎症のラットモデルで、人の疾患に類似し、complete Freund's adjuvantの粗な仁抽出物で能動免疫化したものである。このもでるは、循環血中の免疫複合体沈着由来と考えられてきたが、Van DmmeらとCouserらはpodocyte(糸球体の臓側上皮細胞)に存在するprimary antigenic targetに反応し結合する循環血中抗体を発見した。これは、免疫複合体のin situ合成が起因することを示唆した。他にも、追加抗原、腎外性に正常に存在するもので、biophysicalな毛細血管壁を通して糸球体(糸球体基底膜やpodocyte)に人工的に植え込むことでもこの独特の病変ができることが示された。

しかし、ラット膜性腎症モデルHeymann腎炎のターゲットの抗原と自己抗体のoperativeは病原的自己抗体・病原的T細胞のtransferからのエビデンス、実験動物の自己免疫疾患の再生にも続く間接的エビデンス、臨床的な周辺的エビデンスから、実績を積み重ねていた。
だが、ラットモデルを特発性膜性腎症にそのまま当てはめることは困難で、Heymannモデルのターゲット抗原はヒト腎臓には存在しない。megalin [glycoprotein 330]と呼ばれる自己抗体は未だ報われず、ヒトの場合は未解決のままである。

Beckらがこの疑問を可決した?

抗原に対する自己抗体はヒトのpodocyte cell膜で正常では発現し、M型のphospholipase A2 receptor (PLA2R)が循環し、PLA2R上で、立体配座的なepitope(or epitopes)と結合し、膜性腎症のin situ deposite特性を生み出している・・・という発見

これらの自己抗体は、IgG4独占的でなく、広範な膜性腎症の実例でみられるものと類似している。他の腎不全疾患や膜性腎症の類型(ループス膜性腎症)はこのような自己抗体が現れない。

Beckらは、臨床的特性と循環中自己抗体の存在・抗体価との相関の検討を行った。

もし、疾患が、podocyte上のPLA2R抗原発現する非ヒト霊長類にtransferされたら、あるいは、上皮下沈着物が正常ドナーから膜性腎症レシピエントへ移植されたとき急激に改善されるなら、Witebskyの考察はヒトにおけるこの疾患で十分にあてはまることになる。くわえて、抗PLA1R自己抗体は循環vectorとして働くことも認められており、podcyte PLA2Rは膜性腎症のターゲット抗原としての判明している。

残存するミステリーは、いわゆる特発性の膜性腎症における、抗PLA2R自己抗体が原因の比率は?これらの自己抗体産生のトリガーは?自己抗体はそのように蛋白への糸球体透過性促進を生じるのか?

by internalmedicine | 2009-07-02 17:00 | 動脈硬化/循環器  

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