下気道感染:procalcitoninガイド治療はさほど抗生剤暴露・副事象減少に働かず?

日本では、CRP至上主義なのだが、CRPはTNFαやIL-6より肺炎の臨床マーカーとしては優れている(Chest, Vol 108, 1288-1291,)。しかし、CRPはレントゲンの浸潤影・細菌学的ものとの判断する上では感度が良くなく除外できないし、特異性も悪い。診断検査としての方法論的Qualityも一般的に悪い。CRPを抗生剤処方の迅速ガイダンスとすることは推奨できない (BMJ 2005;331:26 (2 July))と記載したことがある。


procalcitoni(PCT)は細菌感染により放出される訳だが、その値で、ウィルス性の下気道感染から細菌性下気道感染を鑑別し、抗生剤治療の決定指標にしようとする考えで・・・これの評価のため、Shuetzらは、ProHOSP研究にて、PCT-ベース・プログラムと標準エビデンス規範ガイドラインを比較検討したが、副事象・下気道感染抗生剤暴露率、抗生剤関連副事象など差がなかったとのこと


Effect of Procalcitonin-Based Guidelines vs Standard Guidelines on Antibiotic Use in Lower Respiratory Tract Infections
The ProHOSP Randomized Controlled Trial
JAMA. 2009;302(10):1059-1066.
【概要】 以前の小規模トライアルでは、procalcitonin (PCT) アルゴリズムでは、下気道感染(LRTIs)患者の抗生剤使用を減少させたという報告がある。

【目的】 PCTアルゴリズムが重篤な副事象アウトカムリスク増加することなく抗生剤暴露を減少できるか?


【Design, Setting, and Patients】 多施設、非劣性、ランダム化対照トライアルで、6つの三次ケア病院のED(スイス)で、オープン介入、1359名の最重症LRTIsランダム化トライアル:2006年10月から2008年3月

【介入】 PCTアルゴリズムベースの抗生剤投与ランダム化
事前定義カットオフ範囲:抗生剤開始・終了判断を、PCTに基づく群(PCT群)と、標準ガイドライン(対照群)に振り分け
血中PCTは各病院毎、instructionはウェブベース

【Main Outcome Measures】 死亡・ICU入室、疾患特異的合併症、30日以内の抗生剤投与を有する再発感染の副事象アウトカムの非劣性検討
非劣性を7.5%と事前定義;抗生剤暴露と副事象とした

【結果】 包括的副事象発生率はPCT群、対照群とも同等 (15.4% [n = 103] vs 18.9% [n = 130]; difference, –3.5%; 95% CI, –7.6% ~ 0.4%)
抗生剤暴露投与平均期間は、すべての患者で低下(5.7 vs 8.7 days; 相対変化, –34.8%; 95% CI, –40.3% ~ –28.7%) and
各サブグループ:市中肺炎(n = 925, 7.2 vs 10.7 days; –32.4%; 95% CI, –37.6% ~ –26.9%),、COPD急性増悪(n = 228, 2.5 vs 5.1 days; –50.4%; 95% CI, –64.0% ~ –34.0%)、慢性気管支炎(n = 151, 1.0 vs 2.8 days; –65.0%; 95% CI, –84.7% ~ –37.5%)でも同様


抗生剤関連副事象は、PCT群で少ない
(19.8% [n = 133] vs 28.1% [n = 193]; 差, –8.2%; 95% CI, –12.7% ~ –3.7%).

【結論】 LRTIs患者において、PCTガイダンス戦略は、標準ガイドラインに比べ同様の副事象、抗生剤暴露率、抗生剤副事象効果であった。




Procalcitoninによる肺炎予後推定  2008-06-21

COPD急性悪化時の procalcitoninガイダンス治療  2007-01-23

市中肺炎抗生剤使用・中止のガイダンスにPCT(プロカルシトニン)を・・・CRPは唾棄すべき? 2006-06-24


できの悪いCRPをあてにするくらいなら、PCTを普及させた方がましだと思うのだが・・・もちろんもっと良い指標があればそれが良いに越したことはないが・・・

"抗生剤関連副事象はPCT群で対照に比べ少ない"( Antibiotic-associated adverse effects were less frequent in the PCT group (19.8% [n = 133] vs 28.1% [n = 193]; difference, –8.2%; 95% CI, –12.7% to –3.7%).)とかかれてるのに、結論では逆が書かれているのだが・・・



上述のガイドラインは・・・以下のものだそうで・・・

Calverley PM, Walker P. Chronic obstructive pulmonary disease. Lancet. 2003;362(9389):1053-1061.
Gonzales R, Sande MA. Uncomplicated acute bronchitis. Ann Intern Med. 2000;133(12):981-991.
Niederman MS, Mandell LA, Anzueto A; et al, American Thoracic Society. Guidelines for the management of adults with community-acquired pneumonia. Am J Respir Crit Care Med. 2001;163(7):1730-1754.
Woodhead M, Blasi F, Ewig S; et al. Guidelines for the management of adult lower respiratory tract infections. Eur Respir J. 2005;26(6):1138-1180.

by internalmedicine | 2009-09-09 09:22 | 呼吸器系  

<< 肺炎球菌性肺炎予防のエビデンス... 2型糖尿病:メトフォルミンはT... >>