漢方の一律健康保険適応はおかしい・・・という意見まで抹殺される風潮

日本の薬剤承認の問題にまでさかのぼれると思うが、EBM評価に値する報告とは、プライマリエンドポイントを設定し、それに基づくサンプルサイズ(α、βエラーなど考慮の上の)を設定して、プライマリエンドポイントに関して利益性があるか、または、それに対して、有害性が上回らないかなどを評価して行われるものである。

漢方の有効性報告をみると”全般改善度”ってのばかりで・・・なにを改善と言っているのか訳の分からないものが多い。

にもかかわらず・・・

漢方を健康保険で使えるように署名のお願い
http://kampo.umin.jp/
・・・など、漢方の保険適応除外に関して、反対の論旨が目立つ。


世間の話が、本来の仕分けが”OTCに存在する薬品を適応外にしよう”という主旨だったはずのに、なぜか、漢方の保険適応外にというはなしに・・・すり替わっている。


結論から言えば、漢方処方は、保険から外せばいいと思う・・・エビデンスのだせなかった薬剤は保険処方から外れるのは当たり前・・・OTC併用に関しては私は反対であるが、漢方の一律保険適応という現状はおかしい。この分野に、メスが入ってしかるべきだろうに・・・

漢方製薬メーカーや漢方を生業としている人達が、仕分けの真の問題点であるOTCに存在する薬剤を一括健保適応削除という大問題をミスリードしているとしたら大問題。

そうなると、たとえば、入院中の患者にアセトアミノフェンが使えなくなる・・・ということにもなる。漢方などよりはるかに実地的に問題なのだが・・・


漢方は副作用が少なく安全であるという妄想を利用し、”ツムラ漢方”のようなパッケージ商品による大量生産・大量消費が本来の漢方と主張し続けている漢方業者と、それに結託する漢方処方医師たち。

良質なエビデンスが確立してない医薬品を公的保険からカットするのは当然であり、それに対して反論があるなら、科学的エビデンスで反論すべきだろう。


1)パッケージによる、いわゆる”ツムラ漢方”は本来の漢方治療とはいえない

個別に漢方診療した上で、”証”などで、処方医が自ら”さじ加減”で行うのが本来の漢方医療
だが、ツムラ漢方は、何番と数字のついたパッケージ処方であり、漢方とは異なる医療形態を形成している。

うん千年の歴史などない、たかだか、20-30年の歴史しかない診療形態なのである。

2)高品質のエビデンスがない。以前からランダム化対照の必要性は叫ばれていたのに、業界団体・学会が高品質のエビデンス構築に積極的でなかった。

術後の消化管機能異常に対する大建中湯、アルツハイマー型認知症への抑肝散、hot flashへの桂枝茯苓丸など臨床的印象から有効と思われる薬剤さえ、客観的第三者を説得できる十分なエビデンスを提示できてない。

“EBM漢方” 感想文(2004年 07月 04日)で、批判したが、”漢方診療がEBMの手法にそぐわない”というのは、ツムラ漢方においては、前述(1)のごときパッケージ処方であり、西洋医学的病名に基づく処方であり、批判は不能のはずである。無理というのなら、シャムプラセボなど行えば良いだけである。



今の厚労大臣は、公的医療保険で漢方処方を容認するに傾いていると思う。
おそらく、自分の意見がないため、周辺の意見に流されるのだろう。

業界団体からのそれっぽい意見に流され、事の本質である・・・漢方という医療の世界の治外法権をそのまま是認すれば、世界の潮流であるエビデンスに基づく医療から、日本の医療は、ガラパゴス化をつづけることとなる。公的医療保険給付なのだから、エビデンス認めがたい分野の給付削除を勇気をもっておこなってもらいたい。・・・それが政治家の正しい姿勢だろうに・・・

素人政治はまだ良いが、医療を知らない人達が、様々な意見を聞かず拙速にトップダウンで政策決定することの危険性が続く・・・この民主党政権

by internalmedicine | 2009-11-30 09:16 | 医療一般  

<< NGT・糖尿病前状態:1時間後... horizontal syst... >>