喀痰好酸球減少目安の吸入ステロイド投与・・・リモデリング抑制困難?

喀痰好酸球正常化戦略は、粘液炎症細胞とMUC5A発現を減少させるが、上皮下コラーゲン線維沈着に変化をもたらさない”という報告。

吸入ステロイドで、好酸球減少させても、リモデリングの本体であるコラーゲン線維沈着へ影響を与えない。なら、吸入ステロイドで、リモデリング予防を目指すこと自体が無理なのでは・・・という疑念は以前から報告されている。

Monitoring sputum eosinophils in mucosal inflammation and remodelling: a pilot study
J. Chakir, L. Loubaki, M. Laviolette, J. Milot, S. Biardel, L. Jayaram, M. Pizzichini, E. Pizzichini, F. E. Hargreave, P. Nair and L-P. Boulet
Eur Respir J 2010; 35:48-53

喀痰好酸球数を主眼としたsputum strategy(SS)と、臨床的クライテリア重視のcllinical strategy(CS)比較

パイロット研究として、20名の軽症喘息患者対象

研究終了時の吸入ステロイドの平均投与量は、SS群、CS群で同等。
FEV1は研究終了時点で共に増加。
SS群において、粘液リンパ球、好酸球数は研究終了時テンで減少したが、好中球は減少せず。
CS群において、活性化好酸球と好中球カウントが減少。
MUC5A染色はSS群で低下したが、CS群では低下せず。
基底膜下コラーゲン沈着の差は、両群差無し。


気道リモデリングの論文といえど、、気道平滑筋だけの話だったり、基底膜下肥厚、上皮下線維化の話だけだったり・・・

気道平滑筋のリモデリングは平滑筋量の増加、細胞肥厚・過形成を伴い、増殖・合成・収縮機能を促進する筋肉のphenotypeの変化をもたらす。これらの変化は、喘息の病態生理で重要。気道閉塞の増悪をもたらすわけで、気道平滑筋の筋量とphenotypeのメカニズムの理解は十分とはいえないが、気道平滑筋細胞の増殖・phenotypeのメディエーターや増殖因子の調節的役割が関与しているものと思われる。
異なる仮説として、気道上皮、気道神経細胞、細胞外マトリックスなどの細胞的構造的構成成分が、気道平滑筋束へ、炎症下でリモデリングの方向へ、そのphenotypeや機能に対して、影響を与えるというものがある。

Airway Structural Components Drive Airway Smooth Muscle Remodeling in Asthma
The Proceedings of the American Thoracic Society 6:683-692 (2009)


NO呼気濃度モニタリングは、のっけから、”青年・成人持続性ぜんそく管理においてNO呼気モニタリングは有効でない”(2008/09/19)と、無残。

喘息コントロールの客観的指標それ自体も未だ実用的なものがないのが現状。コントロール自体が、リモデリングを抑制するかどうか



喘息患者の一部が気流制限が部分的可逆性しか示さない場合がある。恒久的変化は、現行治療で完全に予防・可逆性不能である。この気道リモデリングは、多くの構造細胞の活性化により、恒久的気道の変化をもたらし治療反応性を減少させる (Holgate and Polosa 2006)。基底膜下肥厚、上皮下線維化、気道平滑筋肥厚、過形成、血管増殖・拡張、粘液栓肥厚・過分泌など。修復・リモデリングプロセスの調整過程は未だ不明。



(Section 2, Definition, Pathophysiology and Pathogenesis of Asthma, and Natural History of Asthma http://www.ncbi.nlm.nih.gov/bookshelf/br.fcgi?book=asthma3&part=A39)


Putative role of altered L-arginine homeostasis in the airway epithelium in regulating remodeling of the airway smooth muscle (ASM) in asthma.
The Proceedings of the American Thoracic Society 6:683-692 (2009)



しかしながら、”inhaled Steroid Treatment As Regular Therapy in early asthma (START) study”にて、ブデソニドの肺機能減少予防効果が示されている。

The effects of inhaled budesonide on lung function in smokers and nonsmokers with mild persistent asthma
Chest. 2009 Dec;136(6):1514-20



リモデリングの重要なメディエータのいくつかは見つかり、最も注目されているの、transforming growth factor-βで、障害・修復上皮から、また、IL-13などの炎症性メディエータの反応によって遊離される。また、上皮・間葉の間のリモデリング反応へのcross talkは、上皮下線維化および喘息感受性遺伝子、disintegrinや metalloprotease (ADAM)33(JACI vol. 15(2) suppl S140 Feb. 2005)と関連する関連する病的メカニズムと考えられる

The Role of the Epithelium in Airway Remodeling in Asthma
The Proceedings of the American Thoracic Society 6:678-682 (2009)


2002年に報告されたADAM33遺伝子と喘息発症の関連はゲノムワイド解析の代表的な例で・・・460の白人家系解析により、染色体20p13のマーカーに喘息と気道過敏性の強い関連が認められた。そして、20p13に存在する23遺伝子について、いくつかのSNPを指標として連鎖解析を行いADAM33が同定された。(http://www.jstage.jst.go.jp/article/jspaci/23/1/1/_pdf/-char/ja/

by internalmedicine | 2010-01-04 10:18 | 呼吸器系  

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