日本人はほんとにある特定の薬だけに特異的な人種なのか?

日本人にだけ効いて、外国では今ひとつという薬の代表にカルシウム拮抗剤という種類の血圧などの循環器系の薬があります。

"Evidence based medicine"といいながら、日本人のエビデンスというのは非常に限られており、高血圧なんて対象患者も多いのだから、もっともできるはずなのですが、なかなか進みません、これはスポンサーである製薬メーカーが金をだすかにかかってるわけで、形勢不利な製薬メーカーが売り込みをはかるため、有利な地域で治験をおこなうことはもっともなわけで、日本人にはカルシウム拮抗剤が有効というテーゼがありますが、これを信用すれば、国際的なカルシウム拮抗剤メーカーはいままでなぜ日本で大規模治験をしなかったかの方が不思議です。

逆に言えば、治験なんてそんなもので、やすい薬のエビデンスを必死でもとめようなんて製薬メーカーも大学教授もいないので、サイアザイド系少量投与を弁護する人がめだたないのですよね。だから私はおかしいといいつづけているのですが・・

で、そのカルシウム拮抗剤が日本では悪名高いβ遮断剤と遜色なかったぞ・一部はよいかもしれないぞという論文があるそうです。

長時間持続性のカルシウム拮抗剤(CCBと略)は心筋梗塞発症に悪影響という欧米のデータがあり、しかも用量依存的であるなど、心血管イベントに関して分が悪いというのが一般的で、、昨今、メタアナリシスではCa拮抗薬の予後改善効果は総じて従来の降圧薬(利尿薬,β遮断薬)と差はなく,”脳卒中の抑制効果は大きいが,虚血性心疾患の抑制効果は少ないと報告”が主です。
日本では諸外国よりCCB使用が多いのですが、日本人の特異性をその根拠とするところがあったようですが、β‐遮断剤に比べ急性心筋梗塞患者での心不全を減少させたという諸外国と不一致な治験がでております。

ちょっとまえの外国の権威ある論文では、“全種類CCBの24トライアルのメタアナリシスで心筋梗塞の患者の死亡率を有意差がないが4%増加させた所見があり、ランダム化試験の有益性の根拠なく急性心筋梗塞患者に用いられてきた。“the National Registry of Myocardial Infarction”で、240989名の患者のうち30-40%にCCBが使用されていた。すくなくともCCBは急性心筋梗塞の死亡率を軽減しないため、標準治療としては推奨しない。短期作動型ニフェジピンに関してはリスクを増加させる可能性があるが、CCB全般も非DHP系もメタアナリシスでは有害・利益性のエビデンスを見いだすことができなかった。”としております。

日本で冠動脈疾患(CAD)合併高血圧患者でのCCBの有用性をしめす治験が公表されています。

JMIC-B研究(The Japan Multicenter Investigation for Cardiovascular Disease-B Hypertension Research, 27:181-191, 2004)
宣伝サイト
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CAD合併症高血圧患者に対するACE阻害剤 vs CCB(ニフェジピン持効錠)
(一次エンドポイント) 心臓死または突然死,心筋梗塞の発症,入院を要する狭心症の発症(初発または増悪),血行再建術の施行(PTCA,CABG,ステント),入院を要する心不全の発症,重篤な不整脈

○血圧・心拍:ほぼ差なし
○心事故の発症率:有意な差なし
○心筋梗塞既往例に対する層別解析では,入院を要する狭心症が長時間作用型ニフェジピン製剤群で有意に抑制(相対リスク:0.42,p=0.01).
○全イベントの発症率:有意差なし
心事故を含むすべてのイベントの発症率についても,3年間を通じて両群間に有意な差は認められなかった(p=0.9381).
このことから,心事故以外のイベントの発症予防に対しても,長時間作用型ニフェジピン製剤がACE阻害薬と同様に有用であることが示された.
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JMIC-B研究では落ち着いているCAD合併症を有する高血圧患者が対象なので、前項心筋梗塞後のアジュバント治療としての立場と微妙に対象が違います。
現在“The Lesser The Better”というのが高血圧治療の基本ですが、これは薬剤特異性より下げればよいのか、あるいは薬剤によって治療効果が異なるのかという面で、製薬メーカーが必死になって自社製品のピーアールのため、治験をたくさんつくりあげているのですが、“The Lesser The Better”以上の結論をまだわたしはしりません。
今回の、JMIC-Bもせいぜい日本人の虚血性心疾患を有する患者にはCCBが比較的安全に使えるかもしれない程度の結果しかもたらさないとおもいますが・・・



β‐遮断剤に勝ったから、今後 ARB vs CCB というテーマなのでしょうか?

ARB vs CCB
CASE-J


個人的には値段の安いCCBにがんばってもらいたいのですが、なんで国際的な標準降圧剤サイアザイド系利尿剤を対象にしないのでしょう。・・・不思議

by internalmedicine | 2004-03-24 12:03 | 内科全般  

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