臨床トライアルの問題点回避を:有意差・信頼区間、複合エンドポイント、群内分析・・・

http://www.theheart.org/article/1042219.do#bib_1


Kaul S and Diamond GA. Trial and error. How to avoid commonly encountered limitations of published clinical trials. J Am Coll Cardiol 2010; 55:415-27.


3つのランダム化トライアルの特異的問題点を挙げている。
・統計的有意差や信頼区間ばかりに比重があり、"clinical significance"や"practical importance"に注意が払われてない。

・複合エンドポイント(composite endpoint)はアウトカム数増加のため、即ち、サンプルサイズを減らすため用いられるが、トライアルから導き出された結論の科学的信頼性を低めるものである

・サブグループ解析を追求することが、よくなされるが、実践の次善的推奨を示す作業に過ぎない



”信頼区間や有意差”重視の軽薄さや、サブグループ解析は所詮サブグループ解析に関して以下で言及した。
統計:サブグループ解析ガイドライン  2007-11-22
同等性・非劣性試験  2006-03-08


”clinical significance ”評価に関する提案方法は、2群治療間の最小の臨床的差である、”minimal clinically important difference (MCID) ”を定義すること


もし、95%信頼区間でこのポイントを超えるなら、治療効果は、最低限・臨床的効果がある(clinically significant)だろうし、信頼区間が完全に、最小臨床的意義付け差の信頼区間以下なら、治療効果として臨床的に意義あり(clinically significant)といえる。

”number needed to treat” や  ”number needed to harm”は、臨床的意義を評価するために用いられる。KaulとDiamondは、Bayesian analysisで、"clinically important treatment effect"の範囲の確率推定を行った。この公式評価には、分析、解釈、結果の表現を含むもので、明確なエビデンス・スタンダードにより、事前設定最小臨床的重要差閾値に比較した臨床的重要性評価を推進することとなるだろう。ガイドライン委員会は、様々な状況に応じて閾値設定する。非致死的イベントは致死的イベントより、大きな差を設定しておく。困難だが不可能ではないだろう。



さらに、複合エンドポイント(composite endpoint)に関して
KaulとDiamondは、composite end pointである、組み合わせ”ハード”例として出現頻度の高くない、”死亡”、”Q波心筋梗塞”、障害ある卒中というものと、”ソフト”例としての、再インターベンション、手術的心筋梗塞(biomarker増加)、再発性狭心症、再入院と行った組み合わせがあるとした。

これらは頻回故に、組み合わせの上に効果的な治療として導かれるが実際には、さほど重要でないアウトカムである。

Kaulらは、心血管トライアルによくある組み合わせエンドポイントが、MACE(major adverse cardiac events)が "minor inconvenient cardiac events" (MICE)へ置き換わりつつあることを指摘している。

組み合わせエンドポイントとして、安全性エンドポイントが"net clinical benefti"として用いられつつあるが、これは、エンドポイントが変わることで、同様な臨床的インパクトを有さないこととなり、有害性の影響をマスクする可能性を指摘している。

構成エンドポイントの成分を比重づけすることが可能であると述べている。たとえば、死亡 1.0で、致死率に応じて定量化する。


結果が出やすく工夫(細工)してある、いんちきトライアルにだまされないためのチェックリストということだろう。

by internalmedicine | 2010-01-28 17:36 | 医学  

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