2005年 02月 20日 ( 1 )

 

メディアバイオレンスのレビューとガイドライン Lancet

メディア・バイオレンスに関して、以前ふれましたが
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200406100910000000074854000
http://intmed.exblog.jp/1583224/


あいかわらず、小児・ティーンエージャー・若年者の、猟奇的な事件が続き、“ゲーム脳”なんてコメントを出してる方もいますが、かなりあやしい論評だというのが主流だとおもうのですが、

長崎県のアンケート調査が結構興味深くてこれをみると、ゲーム特有の問題でなく、メディアや“人の話”・コミュニケーションの問題が大きいだろうと想像されます。
 ↓
http://www.pref.nagasaki.jp/cgi-local/koho_cgi/kensei_news.cgi?mode=detail_disp&yymmdd=20050124&year=2005&month=01&day=24&dno=09&pno=12&key=

Lancet( The Lancet 2005; 365:702-710 )にメディア・バイオレンスのReviewが記載されてます。
Birminghamの研究者はメディアの暴力への公衆衛生的対策を要求  18/02/2005
Birmingham大学のForensic and Family Psychologyのセンターの研究者たちは、メディア・バイオレンスへの公衆衛生アプローチと、子供やティーンエージャーに対する暴力像の影響を減じるためのガイドラインが公表された。
家庭内でのビデオフィルム、衛星、ケーブルテレビが利用されることがこの年代への不適切なバイオレンス・メディアへ、子供のアクセスが可能ということを意味する。近年、インターネット、インターラクティブ・ビデオ、コンピューターゲームに暴力性が含まれることは両親のコントロールの有効性の限界を意味する。

研究では、メディア暴力の子供の行動への影響は、コンドーム使用がHIVウィルス拡散に役立つのと同程度の強さであり、肺癌における受動喫煙の役割と同程度ということが判明されました。

メディアの暴力が思考や情緒に対する影響が短期間であるが、小児・ティーンエージャー、特に男児に対する攻撃的行動の尤度が増加することが証明された。小児・若年者のメディアバイオレンスの影響に関するいくつかの研究で、結果として恐怖感の増強が示されている。この関連は、2001年のWTCのテロリスト攻撃のような災害を描くニュース番組で特に明らかである。

Kevin Browne教授、Director of the Centre for Forensic and Family Psychologyは、「年齢機制を映画などで家庭内で組み込むことはより困難。私たちは、家庭内での薬物や化学物質で行われるように、両親と世話するものが、暴力的なメディア娯楽にも同様に注意するよう勧めることで、子供たちの視聴習慣への大きな責任を両親たちに問うている。極端な暴力と性的な画像を含む内容に対する注意不足は情的なこどもへの育児過誤の一形態と考えられる」

「メディア中の暴力が政策メーカー、および以前より明示的な猛烈な像を備えた時間以上の公に、より好ましくなったことを示唆する証拠があります、しかし、研究は見解を支援しません‥‥それはメーカーを薄膜で覆う‥‥猛烈な像の縮小により収入を失うでしょう。プロデューサーは、キャパシティーあるいは物語のコンテキストで暴力を見る意志を持ってはならない脆弱な聴衆への暴力の潜在的な影響を認識する必要があります。

「メディアにおけるバイオレンスは政策メーカーにとってより寛容で、暴力シーンが以前より年ごとにより過激になっていることの証拠があるが、研究者は映画制作者が暴力シーンを減少することによって収入減少になるだろうという考えを支持しない」

制作者は、キャパシティーをもたない、あるいは、ストーリーの内容の暴力をみようとする医師をもつ脆弱な聴衆への暴力の潜在的な影響を認識する必要があります。

親は検閲的なアプローチより年齢に適切な暴力素材を子供とともにみる教育的なアプローチの方が望ましく、リアリズム、正当化、結果という観点から彼らがみることをクリティカルに評価することを助けるべきである。
※ Centre for Forensic and Family Psychologyの推奨は以下の通り
親への推奨
1. 親は、それが攻撃的姿勢、反社会的な行動、恐怖および感受性低下を促進するとともに、暴力的なイメージを見ることと関連するリスクを知るべきです。
2. 親は、見る前に彼らの子どもたちに利用可能なメディア中のバイオレンスの特徴、範囲および内容を検討すべきです。
3. 親は、子どものそれらの発達上のレベルに適切な暴力的なイメージについての理解を支援するべきです。

専門家への推奨:
1. 情緒的なabuseやneglectの一形態と思えるので、不適切な極端な暴力的なイメージへのアクセスがsuperviseされてない子供へ、親を支援と助言を提供するようにしてください
2. リアリズム、正当化およびその結果から、クリティカルな映画の評価を若年者の教育に含めてください
3. 確かな機関で、若年者へ不適切なバイオレンスメディアエンターテインメントへのアクセスをコントロールする運動を行うべき。
4. ガイダンスの下で、anger management programで暴力映画素材を使用する


メディア制作者への推奨
1. メディア制作者は暴力的な内容を縮小し、反暴力的なテーマおよび宣伝活動をプロモートするべきです。
2. 暴力場面が存在する場合、それは筋書きの上のもので、後悔、批評、ペナルティーを伴うべきものである。
3. 暴力行為は正当化されるべきではありませんし、その重大性は過小評価されるべきでない。


行政者への推奨
1. 政策メーカーは、すべてのメディア形態において、その暴力の特徴、範囲および内容をモニターし、適切なガイドライン、スタンダードおよび罰則をインプリメントするべきです。
2. メディア意識中の教育は優先事項および学校カリキュラムの一部であるべきです。


UNESCO Global Media Violence Studyでは、23カ国の調査で、学校へ行く子供の93%がテレビ視聴に50%の余暇を費やすという知見を見いだした。
Independent Television Commission's research surveyで、子どもの46%が寝室にテレビを持ち、わずか43%が不適切なこどものテレビ視聴をモニターしたり、予防したりしているにすぎないと述べている。








なお、かかりつけ医通信のバックナンバーが消滅しているため、再掲いたします。

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1)“メディア・バイオレンス”という考え

 同級生を意図的に殺傷した佐世保の女子小学生の事件は、メディアからの影
響があることが報道されております。残虐シーンが社会問題化した映画「バト
ル・ロワイアル」になぞられた表現がこの問題の小学生の書き残した記述にみ
られ、前日のテレビ番組で殺害手段の選択につながった可能性など、メディア
からの影響が示唆されております。

 米国では、メディアによる暴力的表現・映像・音声が原因となる小児に対す
る身体・精神・心理的側面悪影響(メディア・バイオレンス)に関する研究が本
格的になされおり、後述のごとく各学術団体が統一した見解・コメント・警告
がなされております。対して、日本では個別的あるいは集団としても散発的な
警告しかなされておらず、メディア規制に関する表層的討議は医学的学術団体
から無縁な議論であり、その肝心な活動自体停止しているように思えます。

 日本でも昭和30年代“プロレスごっこ”で相手を死なせてしまった事件、
“漫画的ヒーローごっこ”で転落事故などが生じましたが、本格的学術的研究
に基づく見解がまとめられることもなく時代が経過しました。その後、質の高
い画像・音声処理などメディア技術の発展に伴い、仮想的世界と現実的世界を
区別しがたいメディア表現が氾濫する状況となりました。メディア・バイオレ
ンスの影響は、それを阻害する知性を圧倒するようになってしまったわけです。
対抗する武器としては、批判的、客観的にメディアからの情報を処理する能力、
すなわち、メディア・リテラシーの学習なのですが、学校教育ではほとんど形
をみておりません。人生経験が少なく、ものごとを客観的な視野で批評する能
力が確立していない小児に対して、全く無防備な状況で、今日に至ってしまっ
たわけです。

 2001年NHK報告によると、首都圏の1500名の小学5年生の調査では、
22%が暴力シーンで恐れるが夢中になったと答え、55%が正義のための暴
力を許容し、29%が暴力シーンを漫画的効果のため使用することを許容する
という報告があります。

 平均的アメリカの子供は週に28時間ほどテレビを視聴、少なくとも1日
1時間はテレビゲームやインターネットを利用。週に数時間映画やビデオ、
音楽を視聴しています。そして、NHK(2002年調べ)によると、日本の
テレビ視聴時間は週平均1日あたり2~6歳では2時間34分、中学生2時間9分、
高校生2時間10分でした。

 NHK(2000年の報告)によると、1日15分以上テレビ視聴するひとが90
%以上で、暴力的内容が多いとされる漫画や映画番組が多いとされる週末のテ
レビ視聴平均時間は3時間25分、土曜日は4時間13分でその比率が高くな
ってます。
 テレビ、映画、テレビゲームなどが問題視されてましたが、近年になりイン
ターネットを介した動画やインターラクティブなゲームなどそのメディアの種
類が増してきております。特に日本の子供のテレビ視聴時間はほぼアメリカと
同じですが、他の電子メディア装置やメッセージ機能づけの携帯電話を多く使
う傾向があります。

 米国心理学会の報告(1993年)によると、「マスメディアは青少年の暴
力傾向と攻撃的な態度に対して 影響を与えており、重要なファクターである。
暴力番組視聴は他人に対する暴力傾向が増加し(攻撃者効果)、暴力の犠牲者に
なることへの恐怖心をあおり(犠牲者効果)、他人が振う暴力に対して無関心
になり(傍観化)、暴力の危険度を過度に評価してしまう(暴力肯定化)可能
性がある」と報告されております。逆の、メディアの暴力描写・表現がもたら
す唯一のポジティブな影響としての抑圧された感情や体験を言葉や行動として
外部に表出して、心の緊張を解消するというカタルシス効果は一般的に否定さ
れてます。

 メディア・バイオレンスの研究の歴史は、米国では1945年テレビ放送が
開始されすぐに検討がなされ、1972年米国公衆衛生局が“…テレビの暴力、
実際、我々の社会に悪影響を及ぼしている”とコメントするまでの認識があり
ました。そして、2000年6月、米国の同様な科学的学会、特に6つのメジャー
な学術団体、アメリカ心理学協会、米国小児科学会、米国児童精神医学、アメ
リカ医学協会、家庭医アメリカンアカデミー、米国精神医学会合同宣言で、
“メディア暴力と子供の暴力的行為のその原因としての関連がある圧倒的根拠
がある”と結論づけています

 米国公衆衛生局、米国国立精神保健研究所や医学・公衆衛生学などが指導的
に行った合同報告を含む1000以上の研究で、メディア暴力と子供の攻撃的
な行為に関連があることが判明しております。

 合同報告の要旨は以下の通りです。
1)多くの暴力シーンをみた子供は他人と対立したときに有効な方法として暴
力を考えて傾向にある。暴力シーンをみることになれた子供は、暴力行為に許
容性が高い。
2)暴力シーンをみることは、現実社会における暴力に情緒的な感性が低くな
りやすい。暴力行為が行われたときの犠牲者側の立場で考えなくなる。
3)娯楽における暴力がこの世界は暴力的であるのが普通という考えを生み出
す。暴力シーンをみることは暴力の犠牲者になることへの恐れを増し、その結
果自己防衛的行為と他人への疑惑を増す。
4)暴力シーンをみることは現実社会の暴力につながる。若いときに暴力番組
をみることになれている子供はそうでな子供と比較して後年暴力と攻撃的傾向
になる。

そして、最終的に、以下の具体的警告がなされてます。
放送・映画などが青少年へ与える悪影響:
http://www.aap.org/advocacy/childhealthmonth/media.htm
────────────────────────────────────
・メディア・バイオレンスは子供の攻撃的行動を引き起こす。1000以上の
 研究でメディア・バイオレンスと子供の攻撃的行動の関連は明瞭。

・18歳まで平均的アメリカの子供はテレビだけでも約20万もの暴力シーン
 をみていると推定される。

・暴力のレベルはプライムタイム中より土曜朝の漫画の方が高い。プライムタ
 イムは1時間に3-5つの暴力シーンだが、土曜朝は1時間に20-25
 シーンある。

・現実社会とファンタジーとの間を容易に理解できないため、メディア暴力は
 特に若年(8歳まで)にダメージを受けやすい。テレビや映画での暴力イメ
 ージは小さい子供へリアルにうつるようである。この画像をみることにより
 心理的トラウマが生じることがある。

・メディア暴力は子供へ影響を与える
  攻撃的・非社会的行為の増加
  犠牲者になることへの恐れ
  暴力の感受性低下、暴力の犠牲者への感受性低下
  娯楽や現実社会での暴力への欲求

・メディア暴力は暴力によりどうなったか結果を示そうとしない。このことは
 漫画、玩具コマーシャル、ミュージック・ビデオで多い。結果子供たちは暴
 力行為に伴う影響がほとんど無いものと思いこむ。

・親はメディア暴力への影響を減らすため
  1日1-2時間にテレビ視聴を制限
  子供のみる番組をモニターし、暴力番組をみるのを制限
  暴力シーンを伴うミュージックビデオや映画をみることを制限、
  視聴する音楽も同様。
  子供に暴力に代換するものを教える。

・親はメディアリテラシー技術を身にづけさせること
  ファンタジーと現実社会との区別
  現実社会での暴力の結果生じたことを教えること
  子供とテレビをみて、放映された暴力行為・画像について議論する。
  子供に同じことが現実社会で生じたら、なにが生じるか聞くこと。
  だれが死ぬ?だれが刑務所へ行く?だれがかなしむ?暴力で問題が解決するか、
  新たな問題を作るか?
  テレビ、映画、ミュージックビデオをみた後にどう感じたかを親が聞くこと
────────────────────────────────────
以上参考になれば幸いです。

 メディア各機関、行政、それに関わる学術団体がこのメディア・バイオレンス
の問題に真摯に対応することを求めます。
 カードによる年齢別の視聴規制、暴力的シーン・音声にかかる規制強化など 
早急に対策が必要です。要求が受けいられるべき要求だと思いますが、その
結果が具体化するまで時間が必要でしょう

 その間にもメディア・バイオレンスによる犠牲者が増加します。そこで各家
庭に関しては、上記提言を参考にされ、メディア・バイオレンス対策を各家庭
で行い、メディアの情報に対して客観的・中立的に考える姿勢を持つよう心が
けください。

【参考URL】
1)http://www.nhk.or.jp/bunken/media-diary-region/ur-r-2001-jpn.html
2)http://www.nhk.or.jp/bunken/nl/n052-yo.html
3)http://www.pta.org/aboutpta/pressroom/pr030321.asp
4) http://niigata.cool.ne.jp/greenchem/s2002/15031.html
5)http://phsc.jp/dat/rsm/2003.matsukawa.pdf
6)http://www.aap.org/advocacy/releases/jstmtevc.htm

by internalmedicine | 2005-02-20 22:24 | メディア問題