2006年 03月 12日 ( 1 )

 

もう やってられない

全国の臨床医たちは現在底知れぬ恐怖感と絶望感に陥っているはず・・・今日にでも、自分が逮捕されるかも分からないのである

今回の逮捕が医療現場に与えたインパクトは計り知れない。



医学・医療の専門家の一般的意見より警察・検察の判断が優先される時代となったということ、不可避であるとおもわれる副事象事例に対し、結果責任が刑事事件として逮捕・起訴という形がとられたなどである。

今回の件では異例だと思うが、日本産婦人科学会を筆頭に各地方の支部、医師会支部などが見解を発表している。いずれも不当逮捕に対する批判である。

この逮捕・起訴劇は、異状死などの届け出を巡る見解に起因すると思う。

“いわゆる突然死又は医療事故死、広く医療関連死の問題を総合的に解決するための第三者機関を設置し、医療関連死が発生した場合、その過誤・過失を問うことなく、この第三者機関に届け出ることとすべきである。”との提唱もあり・・・

具体的には、法医学会では
[1] 外因による死亡
[2] 外因による傷害の続発症、あるいは後遺症による死亡
[3] 上記[1]または[2]の疑いがあるもの
[4] 診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いがあるもの
[5] 死因が明らかでない死亡
と具体例を想定しているそうである.
この4番目を拡大解釈すれば医療行為がなされたすべての事例に対して、異状死と判断し、警察届け出が義務づけられてしまう
のである。


さらに、“死因”が明らかというのは・・・いかなる事を述べているのであろうか?・・・この一文に対して疑を抱くのは私だけではないと思う。臨床を分かってない人たちの創作ではなかろうかと疑念を臨床家は持っている。


警察側から言わせれば、異状死の判断は司法判断だ・・・専門家は俺たちだということになるのだろう・・・だから医療事故報告があった事案はすべて警察が知るべきものであると(・・・お上は偉いのだと)

誤診や予期しない容態の変化・死亡などがあっても、その原因が人的エラー以外のものであれば、医療過誤ではない”というのが、一般の臨床医の考えと思うが、異状死をそうは考えてない法医・医療関係者が存在し、それがdefaultとなってきているのである。これに対し、臨床医は効果的な行動がおこせなかった。臨床医でない机上や電波で活躍の先生方こそネガティブにはたらいていた。


どの癒着胎盤の症例でも、児が娩出する前には癒着胎盤を疑うことすら不可能の場合が多い・・・というのが、Webだけでなく周りの大多数の婦人科医の見解なのだが・・臨床的コモンセンスなるものを無視して、後付けされた法制度で、ある職種を根絶やしにしようとしている。それに対し、国民の健康をまもるべき厚労省はだんまり・・・臨床をしらないはずの情緒と机上の空論を展開する評論家連中・・・



では、今後の医療に対して、臨床医はどうなるのであろうか?

まずは、表面的な安全策ということになるだろう。
 死に至りそうな重症例や複雑な事例をなるべく引き受けない
 予後不良な疾患はうけもたない
 検査・治療機器やバックアップ体制のpoorなところで仕事はしない
 たとえ軽症であっても、当初から死亡の可能性を本人家族に過剰と思える形で伝える
などなど・・・

今後も、リスクの大きい診療科を担当する医師数をへらすことにつながるだろう。
・・・人の死に関わらない分野に身を置きたくなると言うのも、医者側の人権を考えればそういう流れになる


産科などは、滅亡の一途をたどるしかあるまいし、外科的な侵襲処置を伴う科目もどうようであろうし、予後不良な疾患を担当することも忌避するであろう。


それも、この国の選んだ道なのだろう・・・


福島産科医師不当逮捕に対し 陳情書を提出するホームページ
http://www006.upp.so-net.ne.jp/drkato/

支援グループのサイト
http://medj.net/drkato/index.shtml





くりかえすが、医療行為に関わり不幸な転機に陥る状態を医療ミスと呼ぶなら・・・膨大なミスが存在する。たとえ非常にうまくいったケース、たとえば、肺炎にて抗生剤投与中、一時期熱が下がらなくても医療ミスなのである。くも膜下出血の診断は平均的医師は外国でも半数が誤診である。


ヒヤリハットやインシデントレポートなるものが、施設内外の安全性確保のための事故調査以外の目的として使われることがに対して、法制化を求める必要がある。
航空機事故に関して、乗務員関係の組合から同様な働きかけがあると思われる。
http://www.jalcrew.jp/jca/accident/907-958/907_souken_kenkai.htm



我が国においては、事故が発生すると行政の事故調査組織あるいは中立機関としての学協会による調査が実施される場合もあるが、ほとんどの場合圧倒的な機動力のある警察による捜査が主体となっている。その活動は、事故の原因が特定個人の故意または過失によるものかを吟味し、必要により加害者を刑事訴追するためのものである。 捜査結果は裁判の証拠として用いられる場合を除き公開されることは一般にはないため、捜査結果を事故対策に利用することは困難となってくる。事故原因究明のための調査は犯罪捜査に次ぐ二次的な活動となっており、必ずしも十分な権限が与えられているとはいえない現状である。 一方、欧米では、事故再発防止の観点からの事故調査機関が、中立機関あるいは行政機関として存在し、調査・分析・勧告を行うなどの機能を果たしている場合が多い。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-te1030-2.pdf




日本の臨床医は、他国に比べ、同時に、たくさんの外来患者・入院患者を診なければならず、
飛行機を数台同時に操縦しているパイロットのようなものである。
・・・臨床医はみな思ってるはず・・・やってらんない



H18.3.13参議院にて大臣答弁

大臣:地域医療の考え方を変えなければならないとは考えている。
小児科救急を一カ所にするなど集約をしたい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一カ所に集約してへきち切り捨てですかぁ・・・?


検察ファッショ・・・専門家集団がミスでさえないと表明する・・・無罪と思える人をこうやって衆目にさらせて有罪の印象を植え付ける
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3244949.html




国会答弁

<西島英利>
 つまり、国系のガイドラインが出されてから、二倍三倍に届出、送致が増加したことになる。これはガイドラインがいかに大きな効果を示しているかの証拠であろう。
ところで、1994年発行の医師法、医療法の解釈集を見ると、これは当時の健康政策局総務課が編集した「医師法・医療法解」(平成6年8月医学通信社)だが、「殺人、傷害致死、死体損壊、堕胎等の犯罪の痕跡を留めている場合があるので司法警察の便宜のために異常を発見した場合の届出業務を規定したものである」と書いてある。しかし、先ほどのガイドラインはそれ以上に踏み込んだものになっている。当時、ガイドラインの設定に医事課は関わったのか。

<松谷医政局長>
 当時の健康政策局(現在は医政局)医事課はガイドラインの設定に関わっていることはないと聞いている。

<西島英利>
 これだけ大きな解釈の変更である。これだけ、届出、送致件数が増えたのに医事課が関わらなかったのはおかしい。つまり勝手に解釈を変えてしまってガイドラインを作ったことになる。これは非常に大きな問題である。さらにこれに影響を与えたものとして、平成6年に出された「診療中の死亡事故についても異状死と見做して警察に届け出るべき」とした日本法医学会の異状死ガイドラインがある。ところが、このガイドラインを良く読むと、学会が意見一致して出したガイドラインではないことがわかる。
 ある大学の法医学教室の案内書の定義を見ても、法医学には臨床的な考え方は入っていないことがわかる。
 では、外国ではこういう状況があったときにどのような対応を取っているのか教えて欲しい。

<松谷医政局長>
 諸外国では医療事故等について警察とは別の行政機関に対して届出が行われ、その行政機関が死因の調査を行う等の例もあると承知している。
 例えば、米国のカリフォルニア州では医療事故死は、行政官である医師=メディカル・エグザミナーへの届出が義務付けられており、この医師等が事情聴取や解剖を行って死因の調査に当たる。死因究明の結果、医師の過誤が疑われる場合には、州の医療委員会=メディカル・ポートに報告され行政処分の対象となる。英国では医療事故の大部分は、コロナーという行政官に届出が行われ、コロナーが解剖の手配や関係者への事情聴取を通じて死因の調査に当たり病死、自他殺等、死の態様を決定している。フィンランドでは大部分の医療関連死が異状死として警察に届けられ、大学の法医が医師の報告書と警察の調書をもとに検案し、必要に応じて解剖して死因を究明している。いずれにしても、それぞれの国の法制度のもとで様々な対応が取られている。

<西島英利>
 米国では刑事事件として扱われない。問題なのはそういう事故の再発を防ぐために様々なシステムができているわけだ。日本のようにまず警察に届け出る、しかも24時間でそれが医療事故なのかどうかは判断できない。福島県立大野病院の調査は数ヶ月かかっている。そういう流れの中で医師が過失を犯したのかどうかがわかってくる。
 平成13年4月10日に、13の外科系の学会が共同で出した声明文によれば、臨床の現場ではリスクの多い治療、手術も患者、家族にきちんと説明して実施していかざるをえないことがある。こういったことに理解が得られないのであれば、リスクの大きい治療はできないことになる。
 日本医師会の医師賠償責任保険制度による支払は、全国で年間400件ぐらいあり、三割が産婦人科だ。米国でも同じで産婦人科と脳外科の医師のなり手が減ってきている。それは民事で訴えられて、とても保険で対応できないからだ。産婦人科では正常分娩であっても、何が起きるかわからず分娩は常にリスクを含んでいる。
 国が異状死体の定義、判断を今まで全く変えてこなかったことに、今回の大きな混乱があるのではないかと思っている。
 是非、この点について速やかに医師法21条の改正もしくは解釈も含めた検討を早急にやっていただきたい。大臣、如何ですか。

<川崎厚労大臣>
 基本的に異状死の範囲を国が具体的に示すことができるか、ということになると、なかなか難しい課題だ。
 一方で医師法21条が、外国等と比較してこのままで良いのかとの議論はやはり進めていかねばならない。今、米国、英国、フィンランドの例をお示ししたが、この21条問題をしっかりと議論していかねばならない時を迎えていると認識している。


<西島英利>
 診療は日々行われている。全国の医師の不安を軽減するためにも、できるだけ速やかな対応をお願いしたい。
 また、事故について学会を含め、全力を挙げてこの医師を支援していると多くのメールが入ってきている。既に起訴されている状況であり、今ここで事故の評価については触れない。
 しかし、私は感覚としては本当に医師の過失だったのかなあと、強く思っている。厚労省としても、今後こうしたことが起きないように是非速やかな対応をお願いしたい。。


・・・・国会でもあやふやと大臣が発言している異状死の定義を一地方の検察は踏み出してしまった。しかも“患者の立場にたった”という感情論で逮捕してしまったのである。
福島地検・警察は逮捕権の乱用という罪を犯しているのである。

ref.)福島地検も「遺体もなく、身柄を確保したうえで関係者の話を聞く必要があった」とし、ある捜査幹部は「われわれは患者の目線で捜査している<共同通信>



「医師逮捕は不当」と2学会が会見
http://news.tbs.co.jp/part_news/part_news3247488.html
 福島県の県立病院で帝王切開手術中に患者が死亡し、担当医師が業務上過失致死などの罪で逮捕・起訴された問題で、日本産科婦人科学会など2つの学会が「最も難しい症例であり、ミスではない」として、改めて医師逮捕は不当であると訴えました。
 「(今回の件は)診断そのものが難しいし、その程度がどうであるかということを正しく事前に判定することも難しい。ですから、癒着胎盤は産科の中で最も難しい病気のひとつになっている」(日本産婦人科学会・岡井崇常務理事)

 会見を開いたのは、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の2つの学会です。会見で、今回のケースについて「癒着胎盤という診断も対応も難しい症例で、医師が誠意をもって医療を行ったが力が及ばなかった。過失や故意はなく、逮捕・起訴するなど刑事責任を追及するのはおかしい」と改めて訴えました。




専門家集団の意見を無視して、逮捕起訴というのは、逮捕権乱用・職権乱用に他ならない


航空関連は医療関係と異なり、司法は理解を示すようである・・・

便名言い間違えで日航機ニアミス、管制官2人に無罪

 静岡県焼津市上空で2001年、日本航空907便と同958便が異常接近(ニアミス)し、907便の乗客ら57人が重軽傷を負った事故で、業務上過失傷害罪に問われた国土交通省東京航空交通管制部の管制官籾井(もみい)康子(37)、同蜂谷(はちたに)秀樹(31)両被告の判決が20日、東京地裁であった。

 安井久治裁判長は「蜂谷被告が、便名を言い間違えて907便に降下を指示したこと自体は、事故を招く危険性のある行為とは言えない」と述べ、籾井被告(求刑・禁固1年6月)と蜂谷被告(同1年)にいずれも無罪を言い渡した。
・・・・・・
 警視庁は、両被告のほか907便の機長(46)も書類送検したが、東京地検は04年3月、機長については嫌疑不十分で不起訴としている。
(読売新聞) - 3月20日15時36分更新

by internalmedicine | 2006-03-12 13:18 | 医療一般