COPDを喘息とする誤診が多いというけれど・・・


ベーリンガーのやっている宣伝くさいが学会の報告をおこなっているサイトで、抗コリン剤を売らんがためというのが見え見・・・・・


ヨーロッパ呼吸器学会で、COPDと正しく診断されず、喘息と半数が誤診されているという報告


“世界的にCOPDが4番目の死因でありヨーロッパで75%、USでは50%が診断されていない。ERS会議で発表された研究結果で、COPDの半数以上が気管支喘息との不適切な診断をプライマリ・ケア医でされている。
ERSが、UKとUSでの40歳以上の597名の閉塞性肺疾患の診断と、それに合致する治療されているがCOPDの診断を事前に受けていないプライマリ・ケア医師受診患者

スパリロメトリーにて診断
http://www.goldcopd.com/pocketguide/diag.html)
約40%がCOPDでこのうち
・51.5%が喘息だけの診断報告
・10.6%がOLDの診断受けたことない
・37.9%がCOPD構成疾患(慢性気管支炎や肺気腫)の事前に診断を受けた

このCOPDを喘息と誤診された患者の中に、3.5%が抗コリン剤治療を受けているにすぎない、COPDマネージメントとしてβ2刺激剤による症状コントロールが主体となる。”
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<わたしの観想>
COPDを喘息と誤診というのが目につきまして・・・
現場の医師としては、聞き捨てならない
・喘息をCOPDとする誤診、COPDを喘息とする誤診はどちらがすくわれるか?
・スパイロメトリー診断の普及自体がなされてない
・高齢者の多いCOPDでは、抗コリン剤って結構使いにくい

たとえば今見ているカルテで、
“73歳男性 労作性呼吸困難の自覚症状
初診時:FEV1/FVC 49.3% %FEV1 35.2% FEV1 700mlで、β2刺激剤投与後のFEV1の改善はありません。”
ところが、PEF 220→380l/minと改善、自覚症状も改善しております
臨床的には気管支喘息がおもと考えておりますが・・・こういうケースというのはきれいさっぱり誤診と判断されているようで、それこそ、ERS発表者の誤診例も多いのでと思うのですが・・・

“COPDは治療法がない!”と名言して、COPD患者を落胆させるだけの医者をみます。そういう連中が、“喘息をCOPDとする"誤診をしていたら、せっかくの治療機会を失うことになりかねません。そういう事例を実際に経験します。故に、“COPDを喘息とする誤診”の方がすくわれるとわたしは思います。
第一、胸部レントゲン撮影で肺気腫と診断し、スパイロメトリー前提のCOPDまで思いが至らない医者が多すぎだし
むしろ、COPDを喘息とする誤診の方がすくわれるとおもうのですが



<参考>
GOLDのガイドライン、特にスパイロメトリーに従っているため、ATS/ERSガイドラインと重症度分類を呼吸機能で行わないなど若干異なるが、診断そのものは、気流制限:FEV1/FVC<70%などを重視したものである
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COPDの診断は、特徴的呼吸器症状・リスクファクターの暴露歴、とくに喫煙歴で診断されるべき
Stage 0:リスク状態:慢性咳嗽・喀痰:肺機能正常

Stage I:軽症COPD:軽度の気流制限(FEV1/FVC 70%未満だがFEV1が予測率 80 %以上) 、通常あるが、必ずしもあるとは限らない慢性咳嗽と喀痰
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ところが、ATS・ERSジョイントガイドライン(http://www.thoracic.org/COPD/1/diagnosis.asp)では
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COPDの診断は以下の患者では考慮されなければならない
咳の症状

喀痰 or
呼吸苦 or
リスク要因暴露の既往

・スパイロロメトリーが診断に必要;
(気流制限の存在確定後)気管支拡張剤使用後のFEV1/FVC<0.7で、気流制限の可逆性が十分でない場合

・スパイロメトリーは以下の既往がある場合の全ての対象者になされるべき
たばこ・環境暴露、あるいは職業上の汚染
慢性呼吸器疾患の家族歴
咳嗽・喀痰・呼吸苦
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ところで、このSpirivaのプロモーション、ベーリンガーは200床以上のみ相手にするそうで、呼吸器疾患薬剤を厚かった経験のうすいファイザーが、われわれ診療所の医師を相手にするようで、本来GPが主役であるべき薬剤のなのになあと、ベーリンガーから情報収集していたため少々の怒りと落胆を感じているところです。
会社の方針というのは現場とはずいぶんかけ離れていると思うのですが・・・

スパイロメトリーをしないで呼吸器疾患を見ている医者を相手にするわけだから彼らも大変だとは思いますが・・

by internalmedicine | 2004-09-10 11:27 | 呼吸器系  

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