ショック時昇圧剤第一選択薬比較:ドパミン vs ノルエピネフリン

ショック時治療:ドパミン vs ノルエピネフリン

救急にかかわらず、あらゆる臨床の第一線に影響を与えるであろう・・・重要な論文と思う。

Comparison of Dopamine and Norepinephrine in the Treatment of Shock
Daniel De Backer, M.D., Ph.D., Patrick Biston, M.D., Jacques Devriendt, M.D., Christian Madl, M.D., Didier Chochrad, M.D., Cesar Aldecoa, M.D., Alexandre Brasseur, M.D., Pierre Defrance, M.D., Philippe Gottignies, M.D., Jean-Louis Vincent, M.D., Ph.D., for the SOAP II Investigators
N Engl. J Med. Vol. 362:(9) 779-789 Mar. 4, 2010

多施設、ランダム化トライアルで、ショック患者第一選択昇圧剤治療として、血圧回復維持のための、ドパミン か ノルエピネフリンかを割り当て、検討したもの
血圧が、ドパミン 20 μg/kg体重/分 もしくは ノルエピネフリン 0.19 μg/kg体重/分で維持できないときに、オープンラベルのノルエピネフリン、エピネフリン、vasopressinを加える
プライマリアウトカムは、ランダム化後28日での死亡
セカンダリエンドポイントは、臓器維持必要性のない日数、および副事象イベント発生

1679名を含むトライアル
・ドパミン割り付け 858
・ノルエピネフリン割り付け 821
両群のベースライン特性は同様

28日めの死亡率群間差は有意でない(ドパミン 52.5% 、ノルエピネフリン 48.5% ; ドパミン オッズ比, 1.17; 95% 信頼区間, 0.97 ~ 1.42; P=0.10)

しかし、ドパミン治療患者で、ノルエピネフリン比較で不整脈イベントが多い (207 イベント [24.1%] vs. 102 イベント [12.4%], P<0.001)

ドパミンでは、ノルエピネフリンに比べて、心原性ショックでは、28日めの死亡率が増加、しかし、敗血症 1044名、hypovolemic shock 263名では認めず(P=0.03 for cardiogenic shock, P=0.19 for septic shock, and P=0.84 for hypovolemic shock, in Kaplan–Meier analyses)


いつものごとく、序文から引用:
循環性ショックは生命危機状態で、高い死亡率を示す病態である。輸液投与がまず行われるべきだが、患者の状態が安定しない場合があり、アドレナリン作動性薬剤がしばしば低血圧補正に要求される。これらの薬剤間で、ドパミンとノルエピネフリンがもっとも用いられる薬剤である。
両薬剤ともα-アドレナリン作動性およびβ-アドレナリン作動性受容体に影響を与えるが、その程度は異なる。
α-作動性の効果としてvascular toneを亢進するが、心拍出量低下し、regionalには潅流を減少させる。特に、皮膚、内臓、腎血管床などへの減少がめだつ。
β-作動性は、inotropicおよびchronotropic効果で、血流維持そして、内臓潅流を増やすことにつながる。
β-アドレナリン作動性刺激により、細胞メタボリズムを亢進し、免疫抑制効果を持ち合わせるような予期せぬ作用がある。
しかし、ドパミン作動性刺激は、視床下部・下垂体機能に影響を与える有害な免疫学的影響をもたらし、prolactinや成長ホルモン値を極度に減少させる。
ドパミンとノルエピネフリンは、それぞれ、腎臓、内臓領域、下垂体系に対して異なる影響を与えるが、その臨床的意義は不明であった。
Consensus guidelines と expert recommendations ではどちらの薬剤でもよいとしている。
しかし、観察研究では、ドパミンが死亡率と関連しているような報告がある。Sepsis Occurrence in Acutely Ill Patients (SOAP) studyでは、1058名のショック患者で、ドパミンがICU死亡の独立した危険因子とされた。メタアナリシスで、62名の患者でドパミンとノルエピネフリンの相違を報告。





非外傷性心停止への静脈内薬剤投与は生存率を改善せず
...vasopressin併用は無効 2008年 07月 03日 .

治療不応性院内心停止に対するvasopressin、 epinephrine、コルチコステロイドは有効
...vasopressin-epinephrine併用により長期生存率改善が示されている。心停止にて、cortisol値は心肺蘇生中、蘇生後、相対的に低い。仮説として、vasopressin-epinephrineとcorticostero...
2009-01-13

院外ACLS:vasopressin併用は無効
...vasopressin討議・・・と思ってたが、これで一段落?(日本では、社会インフラも乏しく、院外ACLSというのが普及しないままだが・・・) 院外CPR時のエピネフリン+vasopressin vs エピネフリン単独比較トラ...
http://intmed.exblog.jp/ - 2008/07/03 08:42:30

重症敗血症ショックに対するvasopressin vs ノルエピネフリン・・・死亡率改善効果明確でない
...vasopressin割り当てを比較2群間に28日、90日での死亡率の差がなく、副作用イベントの有意差もない。ただ、軽症群と思われる例ではvasopressinは有効なようである 前置きからだが・・・敗血症性ショックに関して死...
http://intmed.exblog.jp/ - 2008/02/28 09:09:00



投与マニュアルを施設ごとに設定すべきだろうが・・・時に、看護師が勤務時間帯の都合で、24時間使い切りを要求することがある・・・そうなると、計算が結構めんどうになる

google documentで私は作ってあるのだが・・・

こういうので確認している
 ↓
http://www.medcalc.com/ivrate.html

by internalmedicine | 2010-03-04 08:38 | 動脈硬化/循環器  

<< 糖化ヘモグロビンは非糖尿病成人... 子供の蘇生: bystande... >>