ARDS容量障害・周期内の過伸展と虚脱のCT画像化
2010年 03月 09日
このように、昔は、頭の中でしか思い浮かべられなかったものが、CTのscanning時間が短縮化できたおかげなのだろう、画像化できることにあらためて驚く。
物理学的障害:容量障害(volutrauma)
・High volume injury
過度の吸気圧、過度の吸気時間による末梢気道および肺組織の過伸展による肺胞上皮や肺毛細血管内皮細胞の障害である。呼吸窮迫症候群(RDS)を発症し、肺サーファクタント補充療法後に平均気道内圧12cmH2O、6 時間IMVで人工換気した山羊新生仔の肺組織障害標本のように、数時間の人工換気で、未熟な肺は障害を受けることがわかる。
血管内皮細胞の障害は、肺間質への血漿成分の漏出を招き、肺胞上皮の障害は、肺サーファクタントの活性阻害物質である血漿成分(アルブミン、フィブリノーゲンなど)の肺胞腔への漏出を来す。肺胞腔へ漏出したフィブリノーゲンは、組織トロンボプラスチンによりフィブリンへと変化し、肺硝子膜(hyaline membrane)を形成し、ガス交換を障害する。
予防としては、過剰な吸気圧、吸気時間を避けるために、換気モニター等を用いて設定し、これらの障害を予防する必要があり、ある程度の高炭酸ガス血症は、血中pHが正常であれば容認し、人工呼吸器の設定の上昇を避ける必要がある。(permissive hypercapnea)
・Low volume injury:新しい概念であり、周期的な過伸展と虚脱(cyclic opening and closing)によって生じるずり応力(shear stress)による末梢気道や肺胞の障害で、これにより、血管内皮や肺胞上皮に障害を生じ、肺胞マクロファージの活性化や好中球の肺への集積などの炎症機転の進展が生じ、サイトカインや顆粒球エラスターゼなどの炎症性メディエーターにより肺障害が進行する病態と考えられている。この状態が、更に進展すればSIRS(systemic inflammatory response syndrome)となり、多臓器不全に陥ることになる・・・
http://www.me-times.co.jp/book/pdf/Insp3.pdf
Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2010; 181: 578-586. First published online November 12 2009
high PEEP後の肺胞ずり応力(alveolar strain)と周期的な過伸展と虚脱(cyclic opening and closing)
68名のALIもしくはARDS患者のデータベースからのデータ解析で、5、15、45cm水柱気道圧時の全身CT検査された患者
吸気終末の非aeratedな肺組織をCT pressure-volume curveにて推定
Alveolar strain と ”opening and closing”lung tissueを、5、15cmPEEPで計算
回復可能な肺組織比率が高い患者では、PEEP高値で、劇的に”opening and closing”肺組織が減少する(P < 0.001)、しかし、回復可能部分の比率が少ない患者では、差がなかった。
反対に、alveolar strainは、2群とも、同様に増加 (P = 0.89)
”opening and closing”肺組織は、主に肺のdependent もしくは、肺門部分に分布
その出現は死亡の独立したリスク要因(odds ratio, 1.10 for each 10-g increase)
barotraumaに対する、vlutrauma・・・そして、周期的な過伸展と虚脱(cyclic opening and closing)によって生じるずり応力(shear stress)による末梢気道や肺胞の障害も、ずいぶん前から取りざたされてると思う。少なくとも20年前につとめていた病院内ではこのディスカッションはよくなされてた。
ref. 良い雑音? "Noisy Ventilation" 2009-04-08
by internalmedicine | 2010-03-09 10:03 | 呼吸器系