NAVIGATOR 研究:Valsartanは糖尿病発症抑制を示したが、心血管アウトカムは改善せず
2010年 03月 15日
IGT+心血管疾患・リスクありを対象に、ライフスタイル介入に加え、valsartan 5年間使用にて、14%の糖尿病発症抑制効果を認めたが、心血管イベント率減少はもたらさなかった(ClinicalTrials.gov number, NCT00097786 [ClinicalTrials.gov] )
Effect of Valsartan on the Incidence of Diabetes and Cardiovascular Events
The NAVIGATOR Study Group
www.nejm.org March 14, 2010 (10.1056/NEJMoa1001121)
二重盲検ランダム化臨床トライアル2×2区分デザイン、9306名対対象IGTでかつ、心血管疾患を有するか、心血管リスク因子者を対象に、 nateglinide (up to 60 mg three times daily)かプラセボを割り付け
2×2区分デザインに、ライフスタイル修正に加え、valsartan (~ 160 mg /日) と プラセボ( nateglinide or placebo) 割り付け
糖尿病発生を5.0年中央値(vital statusは6.5年)にてフォロー
3つのアウトカム構成
・糖尿病発症
・心血管原因による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的卒中、心不全入院
・構成による心血管アウトカム(コアな心血管アウトカム、不安定狭心症による入院、動脈再建術
Valsartan群では糖尿病累積発生 33.1%、プラセボ対照では36.8% (ハザード比, 0.86; 95% 信頼区間 [CI], 0.80 ~ 0.92; P<0.001)
Valsartanはプラセボに比較して、拡大心血管アウトカム (14.5% vs. 14.8%;ハザード比, 0.96; 95% CI, 0.86 ~ 1.07; P=0.43) 、核的心血管アウトカム (8.1% vs. 8.1%; hazard ratio, 0.99; 95% CI, 0.86 ~ 1.14; P=0.85))減少有意に認めなかった。
重要視される、臨床的アウトカムに影響を与えなかったことで、評価がすっきりといかない!
プール化解析では、ACE阻害剤とARBの検討で、25-30%の減少効果が期待された。この研究ではライフスタイル修正がなされており修正される余地が少なくなった後ということと、Valsarrtan使用中止が多く、効果が減弱された可能性がある・・・とのこと
RAS系抑制の2型糖尿病抑制効果のメカニズムとして・・・インスリン感受性とインスリン分泌の組み合わせ、血管系への薬物的効果とイオンバランスであり、ACE阻害剤やARBは骨格筋の血液循環を改善し、末梢でのインスリンの働きを改善し、膵臓におけるインスリン分泌を促進する可能性がある。アルドステロンによる細胞性カリウムとマグネシウム・プール保持効果により、細胞性インスリン活動性・インスリン分泌促進効果改善するという古典的説明に加え、新しい考えは、angiotensiとbradykininのインスリンカスケード信号への影響、GLUT4糖担体のRAS抑制後の増加も考えられている。さらにAngiotensin II抑制は、adipocyteの再生・分化促進を防御する可能性もある。特定のlipophilic ARBsは脂肪細胞でのPPAR-γ活性を誘導する。2型糖尿病でのRASの効果は主に、thiazolidinedione-like effectと関連している。
・ Scheen AJ. Renin-angiotensin system inhibition prevents type 2 diabetes mellitus. 2. Overview of physiological and biochemical mechanisms. Diabetes Metab 2004;30:498-505.
・ Gress TW, Nieto FJ, Shahar E, Wofford MR, Brancati FL. Hypertension and antihypertensive therapy as risk factors for type 2 diabetes mellitus. N Engl J Med 2000;342:905-912.
・ Barzilay JI, Davis BR, Cutler JA, et al. Fasting glucose levels and incident diabetes mellitus in older nondiabetic adults randomized to receive 3 different classes of antihypertensive treatment: a report from the Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial (ALLHAT). Arch Intern Med 2006;166:2191-2201.
いずれにせよ、臨床的にARBがIGTでの心血管イベントへの影響を与えるかどうかは未だ疑問として残存することとなった。
by internalmedicine | 2010-03-15 10:48 | 糖尿病・肥満