住民コホート毎の2009H1N1の抗体陽転価分析:日本のワクチン行政は正しかったか?

Chen らは2009年インフルエンザ(H1N1)の単一エピデミック前、中、後での血液サンプル最終にて、異なる地域の成人コホート。
一般住民コホートで13%のseroconversionが認められ、軍隊では29%、急性疾患病院スタッフでは7%であったという報告

異なる住民コホートで異なる要素が関与する可能性があった

2009 Influenza A(H1N1) Seroconversion Rates and Risk Factors Among Distinct Adult Cohorts in Singapore
JAMA. 2010;303(14):1383-1391.
四つの異なるコホート(June 22, 2009, to October 15, 2009. )における一連の血清学的試料研究
・一般住民 (n = 838)
・軍隊 (n = 1213)
・急性期医療施設スタッフ (n = 558)
・長期ケア施設住居者 (n = 300)

Hemagglutination inhibition 検査

ベースラインでの抗体価(40以上)
・一般住民: 22 (2.6%; 95% 信頼区間[CI], 1.7%-3.9%)
・軍隊:114 (9.4%; 95% CI, 7.9%-11.2%)
・急性期医療施設スタッフ:37(6.6%; 95% CI, 4.8%-9.0%)
長期ケア施設: 20 (6.7%; 95% CI, 4.4%-10.1%)

一つ以上のフォローアップ資料のある被験者のうち
・一般住民: 312(29.4%; 95% CI, 26.8%-32.2%)
・軍隊:98 (13.5%; 95% CI, 11.2%-16.2%)
・急性期医療施設スタッフ:35((6.5%; 95% CI, 4.7%-8.9%)
・長期ケア施設: 3 (1.2%; 95% CI, 0.4%-3.5%)


1名以上seroconversionを有する家族からの地域被験者にserocnversionの頻度増加 (補正 オッズ比 [OR], 3.32; 95% CI, 1.50-7.33), あり
しかし、高齢者はseroconversionオッズは低下(補正 OR, 0.77 / 10 年; 95% CI, 0.64-0.93)

ベースラインの抗体価増加は、地域でのseroconversion減少と相関 (各ベースライン倍化補正 , 0.48; 95% CI, 0.27-0.85)、軍隊(adjusted OR, 0.71; 95% CI, 0.61-0.81)、病院スタッフコホート (adjusted OR, 0.50; 95% CI, 0.26-0.93)



最近の後顧的検討で、日本の厚労省のワクチン優先者選別は確実に間違えていたことが確かとなってきた・・・すなわち、地域ごとに社会的活動性の高い、感染リスクの高い、中高生を主体とする若年者を優先摂取すべきで、さほど、外出の機会の少ない施設収容者などは後回しでよかったということになる。

厚労行政は、自らの施策に対して、反省する気は全くないようで、議事録公表しないというおそろしい行政組織である。現在、トップに問題があり、しばらく、迷走が続くのだろう・・・

新型インフル諮問委、「議事録なし」は事実◆Vol.54
http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/116484/
会議10回中3回分の「議事概要」が残るのみ、検証は可能かは疑問

2010年2月24日 村山みのり(m3.com編集部)

2月22日、時事通信が『新型インフル諮問委、記録残さず=首相に答申の専門家会議--非公開の10回検証困難』として、「政府の新型インフルエンザ対策本部(本部長・鳩山由紀夫首相)に、国が採るべき方針を答申してきた専門家諮問委員会(委員長・尾身茂自治医科大教授)が、開いたすべての会議で議事録などの記録を残していなかった」と報じたことについて、内閣官房・官房副長官補室・新型インフルエンザ等対策室の三好英文氏は、m3.comの電話取材に対し、この報道内容が事実であることを認めた。






新型インフル政策の根拠明示を 厚労省の会議が広報総括
http://www.47news.jp/CN/201004/CN2010041201000479.html
 厚生労働省の新型インフルエンザ対策総括会議が12日、広報や情報伝達をテーマに開かれ、専門知識を持った広報官の設置や、政策の決定、変更の際に根拠を明示することを求める意見が出席者から相次いだ。

 電通パブリックリレーションズの菊地彰夫取締役は、国や自治体、世界保健機関(WHO)など複数機関が情報発信したため情報が錯綜したと指摘。「責任のある報道官1人が統一見解を発信すること」を提案した。

 防衛医大の川名明彦教授は「われわれも不安を抱えながら判断していくなかで、なぜこういう対策を推奨するのか、(根拠を)説明することが重要だ」と強調した。

 国立感染症研究所の安井良則主任研究官は、初期に患者が発生した大阪府内の学校が中傷された事例を挙げ「現状のままでは、今後新たな感染症が国内に侵入しても報告がためらわれるのではないか」と危惧を示した。

 川崎市健康福祉局の坂元昇医務監は、厚労省からの情報伝達の遅さを指摘し「自治体とのホットラインを迅速に開設すべきだ」と話した。

 総括会議は今回が2回目。今後もテーマ別に議論を重ね、6月には報告書をまとめる予定。
2010/04/12 17:04 【共同通信】




広報関係の反省に終始しているようだが、main streetである”ワクチン接種方針”に関して真正面から総括をすべきだろうに・・・

”ネットが悪い”・・・という、何の意味もないどころか、言論封殺を意図する以下の報告じゃ・・・日本の行政に未来はない
新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議4月13日

平成21年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)「2009年度第一四半期の新型インフルエンザ対策実施を踏まえた情報提供のあり方に関する研究」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/dl/infu100412-08.pdf

誹謗中傷・風評被害について
•未知なるものへの恐怖感は誰もが持っているものであり、特に新たな感染症の発生と侵入という事態に対して国民の多くが恐怖感や嫌悪感を持つに至ったことは当然であると思われる
•健康被害を最小限にするために、広く危機意識を高めるために様々な情報が発信・配信されたことは決して誤っているものとは思えない
•では何故、新しい未知な感染症に対する恐怖感・嫌悪感からくるストレスが我が国では発病者とその関係者にぶつけられるのか?
•何故、初期に患者が発生した生徒の学校長が皆謝罪をするのが当たり前となり、学校自体が非難の対象となったのか?
•現状のままでは、今後とも同じことが繰り返され、新たな感染症が国内に侵入した場合、正直に報告することがためらわれることが続いていくものと危惧される

by internalmedicine | 2010-04-14 09:30 | インフルエンザ  

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