インフルエンザをどう扱うか
2004年 09月 17日
インフルエンザをどう扱うか
BMJ 2004;329:633-634 (18 September), doi:10.1136/bmj.329.7467.633
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/329/7467/633
<原文をかなり意訳・省略してあります。>
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リッチでパワフルな社会がなぜ、年1回のインフルエンザを予防、克服できないか?
まず大事なことは、流感として知られているのは症候群であり、疾患ではない(What is commonly known as influenza or the flu is a syndrome, not a disease.)
問題となる呼吸器系ウィルス(一部は細菌感染も関与)の比率はその年ごとに異なり、その原因は臨床症状・所見からは区別できない。不明の場合は、インフルエンザというよりインフルエンザ様疾患とすべきである。
インフルエンザはインフルエンザA・Bが原因の疾患であり、インフルエンザ様疾患は通常の臨床では診断困難である。臨床上のヒントとしては、季節性(RSウィルス、インフルエンザA・Bは秋・冬である)や年齢(RSウィルスは最若年層)などであり、局所的流行が有る場合も判明可能である。
毎年の微生物学的に判明させるには限界があり、定型的な臨床像を提示する研究も少なく、研究がなされる期間だけ提示される。信頼できる“リアルタイムな”情報は実施困難である。
Nicholsonらの老人での呼吸器感染症の原因報告がある。
検査方法で同定されたもので、呼吸器感染の原因重複した原因を示すものである。
数年に及ぶ研究では、インフルエンザ様症状の1/3はライノウィルス、のこりは他の原因の混在であり、そのなかにインフルエンザA・Bが存在する。
→http://bmj.bmjjournals.com/content/vol329/issue7467/images/large/jeft184697.f1.jpeg
インフルエンザ様疾患のうちのインフルエンザA・Bの比率は月ごとに変化する、流行すれば、その予防・治療の有効性とのギャップは少なくなる。インフルエンザA・Bに対する不活化ワクチンが抗原的によりマッチした場合の効果性(effective)は70%(56-80%)で、健康成人では39%(21-53%)。Wikinsonらによって示されるように、インフルエンザA・Bウィルスの流行の場合は常に、効能性(efficacy)・効果性(effective)は増加する。インフルエンザA・Bの比率(上図ピンク部分)が予想できないので、毎年のワクチンはコストがかかりで、有益性はさまざまとなってしまう。
抗ウィルス薬は予防的役割にも使われつつある。成人ではインフルエンザA予防するのにアマンタジンは61%(35-76%)の効果的(effective)。Rimantadineは同様の有効性だが、効能性(efficacy)は少ない (25%, 13% to 36%)。
新しいニューラミニデース阻害剤である、oseltamivirやzanamivirは70-90%の効果性(effective)はあるが、インフルエンザ様症状存在下でのoseltamivirのルーチン投与は費用効果的(cost effective)でない。
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Implications of the incidence of influenza-like illness in nursing homes for influenza chemoprophylaxis: descriptive study
BMJ 2004;329:663-664
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/bmj;329/7467/663
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同様に、抗ウィルス薬は、小児・健康成人・高リスク群での有症状期間を約1日減少しする。抵抗性の出現(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=retrieve&db=pubmed&list_uids=15337401&dopt=Abstract)はルーチンな使用に限界をもたらす。
インフルエンザを取り扱うときに、インフルエンザか否かを信頼できる状況を得る必要があり、結局Harlingらの述べるごとく、サーベイランスを強化する必要がある。
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<余談>
・その点、日本はえらいですね。かなりやくだちました。
流行迅速把握情報:http://www.flu.msi.co.jp/graph/
は非常に役立ちました。(わたしのところも、情報提供医療機関になっております)
でも、欲を言えば、局所性のデータがもっとほしいところです。
・タミフルのインフルエンザ予防適応がつきそうですが、これに関して、取り扱いの基準がまだ明確でないのです。ワクチン原則は変わらないと思いますが、どうのようにつかっていくかが今期のテーマなのでは・・・
by internalmedicine | 2004-09-17 12:27 | 呼吸器系