プラセボに負けたValsartan・・・NAVIGATOR研究・・・
2010年 04月 22日
NAVIGATOR Study は、”2-by-2 factorial design”で、” valsartan (up to 160 mg daily) or placebo (and nateglinide or placebo) ”という信じがたい比較である。
なんと、Valsartanは心血管イベントにおいて、プラセボに勝てなかったという・・・驚くべき事実
・・・って、書くと、まぁ、センセーショナルになるのだが、考えてみれば、もともと、糖代謝異常を有する患者は2型糖尿病とCVDのリスクを有し、糖尿病頻度減少と、それによる死亡および合併症減少をはかるのが研究の目的。ライフスタイル修正により糖尿病リスク減少の報告もなされているが、心血管疾患アウトカムに関してはその評価が未だなされていない。また、特定薬剤のメトフォルミン、アカルボース、rosiglitazoneなども糖尿病減少をもたらすようだが、アウトカムに関してもなかなかその結果が出されてない(論文の序文から引用)。
要するに、たった5年前後程度で、いまだ臨床的アウトカムにまで影響を与える介入方法をまだ人類は見いだしていないのである。
この研究の、” impaired glucose tolerance and established cardiovascular disease or cardiovascular risk factors”ということで、心血管リスク要因として何らかのリスクを有する患者がほとんどで98%、心血管疾患既往24-25%程度という比較的リスクのある人たちである。
トライアルはこのpopulationならイベントに差が出ると思ってたのだろうが・・・そうは問屋がおろさなかった。
Diabetes Reduction Assessment with Ramipril and Rosiglitazone Medication (DREAM) study (ClinicalTrials.gov number, NCT00095654 [ClinicalTrials.gov] )でも、Ramiprilでも、多少食後血糖に影響を与えたが、糖尿病頻度を変えなかったのに、無謀なことをしたものだ・・・
Effect of Valsartan on the Incidence of Diabetes and Cardiovascular Events
The NAVIGATOR Study Group
N Engl. J Med. Vol. 362:(16) 1477-1490 Apr. 22,2010

プラセボに負けた理由は、ライフスタイルによって修飾されたためという苦しい弁明がおもしろい論文
私の”今年の最も苦しい弁解論文”としてノミネートされたw
by internalmedicine | 2010-04-22 09:23 | 動脈硬化/循環器