老人の認知機能障害と運転

高齢者診療に関わるあらゆる臨床医にとって無縁でいられない話・・・都市部では、車が無くても生活できるが、田舎では、車がなければ自立も甚だしく困難という状況は稀ではないのだが、永田町やせいぜい県庁所在地で住んでるとそのことを忘れている・・・日本の政治


かかる間も、老人に関わる悲惨な交通事故が発生している・・・加害者となる事故が目立つ。”枯れ葉”マークという報道による感情的批判で、この問題は日本では、表だって語られなくなってしまった。

一方で、医療機関に、安全性判断を投げ捨てる警察などの政府対応・・・

医療機関側としては、一方的な警察などからの証明の要請に対して科学的根拠をもって記載できないと・・・突っぱねるべきである。

JAMAの解説記事
The Older Adult Driver With Cognitive Impairment: "It's a Very Frustrating Life"
David B. Carr; Brian R. Ott
JAMA. 2010;303(16):1632-1641.

自動車は老人にとっての移動手段としてやはり残るもの、しかし、高齢者の認知機能低下と認知症はしばしば安全運転を阻害する。
運転に関して認知症重症度評価法として頻用されるものはないし、認知障害を伴う老人の運転者に対する評価コンセンサスもないし、運転に適するかどうか判断するgold standardもない

けれど、一般臨床家に、患者から、あるいは、家族から、あるいは他の医療従事者から、各州の Department of Motor Vehiclesから、運転に患者が適するかどうかの評価を求められ、運転許可についての推奨を行わなければならないことがある。

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以下のいづれの推奨も科学的根拠に乏しい
・診療ベースの検査を、認知機能障害老人ドライバーのリスク層別化として用いるべき
・医師は、運転停止を家族に助言すべきで、他の移動手段の示唆を勧めるべき
・医師は、認知機能障害を有する高齢者の運転の状況について、運転リハビリテーション専門家に運転試験をすべく紹介すべき



Am Fam Physician. 2006 Mar 15;73(6):1029-1034.

by internalmedicine | 2010-04-28 10:10 | 精神・認知  

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