CTの放射線・安全性に関する重大な懸念

私自身、CT検査を行う施設管理者としても、がん診療のごく一部をおこなってる医療者としても、この話興味をもっているが、当方地域では、”CTによる肺がん検診”の当局によるごり押しが危急の状況となっている。


解説記事として、CTの照射量に標準プロトコールがないという驚き
CT Dosing Lacks Standard Protocols
http://www.medpagetoday.com/Radiology/DiagnosticRadiology/20853



Is Computed Tomography Safe?
Rebecca Smith-Bindman, M.D.
www.nejm.org June 23, 2010 (10.1056/NEJMp1002530)


NEJM誌にベル麻痺診断のためのCT・MRIスキャン検査後、帯状の脱毛を発症、その後めまい・混乱を生じ、労務不能となった事例の報告から始まり、6Gyの照射で、通常脳のCTスキャンの100倍もの照射、平均的脳血流スキャンの10倍、放射線治療の3倍もの照射がなされていたことが判明・・・被害女性は、CTスキャン製造会社への連邦地裁と州医療過誤訴訟を起こしている。

378名以上が脳潅流スキャンで放射線overdoseが生じており、FDAは、病院は注意深くCTプロトコールチェックすべきと国家的な助言を行っている。

FDA は不必要な医学画像放射線減少に着手 (www.fda.gov/Radiation-EmittingProducts/RadiationSafety/RadiationDoseReduction/UCM199904)

CTスキャンは、照射部位により異なるが、通常のレントゲンの100-500倍の放射線量であり、新しいCTほどboosted doseを必要としている方向にある。
局所脳血流を調べる場合、通常の脳のCTの10倍もの放射線量であり、診断上の役割は大きいが、適正使用に関するevidence-based guidelineは存在しない。故に、施設毎にばらつきがあり、そのばらつきは、科学的エビデンスというよりは、医師の好み、製造会社のプロモーションなどの要素が大きいという状況


上記事例では、低放射線量・ルーチンの頭部CTで十分だったのに高放射線脳血流CTがなされた可能性がある。

CTによる癌リスク増加は直接示されているわけではないが、放射線はcarcinogenであり、疫学的・生物学的エビデンスから ionizing-radiation exposure と癌の関連は明らかである。

リスクの程度に曖昧さは残すが、National Research Council (NRC)は単回CTによる癌リスク増加を結論づけている(oard of Radiation Effects Research Division on Earth and Life Sciences. Health risks from exposure to low levels of ionizing radiation: BEIR VII phase 2. Washington, DC: National Academy Press, 2006.)。


この筆者らの計算、すなわち、NRCのモデルを用いた場合、非受容性ほどの放射線量だと、80名に一人の癌リスクを生じるという計算になる。



ACCF/ACR/AHA/NASCI/SCMR 2010 Expert Consensus Document:心臓CT血管造影・心臓MR血管造影  2010/06/01


アメリカ: 不適切なCT/MRI検査 26% 


数々の反対にかかわらず、わたしどもの地域では、肺がん検診時にCTを用いることとなったようだ。肺がん三次検診施設に説明をすると地域医師会への説明であったのになされることなく、断行のようである。
知事が肺がんをCTで見つかったから、県全体でそれを行うという、あまりに非科学的な愚行・・・その危険性に関する検診側の説明責任を追求するつもりである。CT検査説明時に放射線被ばくに関する説明ほぼなされてないと被検診者から聞いている。倫理的にも問題のある対応

by internalmedicine | 2010-06-24 10:13 | がん

 

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