糖尿病:空腹時血糖と血管リスク :住民心血管疾患死亡の11%に関与、他リスクとの関連
2010年 06月 26日
ADA学会口演セッション中に、The Lancetでonline発表
さらに、血糖降下治療は、中等度の心筋梗塞死亡減少に役割を果たすが、血糖だけが単独プレーヤーではないことが示唆され、脂肪酸やリポたんぱく代謝、内臓脂肪沈着、肝機能、RASなども関連しているから単純ではないことが示唆された。
Sarwar N, et al "Diabetes mellitus, fasting blood glucose concentration, and risk of vascular disease: a collaborative meta-analysis of 102 prospective studies" Lancet 2010; 75: 2215–22.
698782名、102の前向き研究で、平均年齢52歳、女性 43%、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア、日本、カリブ海諸国
糖尿病ベースライン存在は7%で、非致死的・致死的血管疾患アウトカムは52765
ほぼ2倍の心疾患、虚血性卒中、他の血管疾患死亡リスク
* 冠動脈性心疾患: HR 2.0, 95% CI 1.83 to 2.19
* 虚血性卒中: HR 2.27, 95% CI 1.95 to 2.65
* 出血性卒中: HR 1.56, 95% CI 1.19 to 2.05
* 分類不能卒中: HR 1.84, 95% CI 1.59 to 2.13
* その他血管疾患死: HR 1.73, 95% CI 1.51 to 1.98
非致死的より致死的心筋梗塞より致死的なものが1/3ほど高いのが特徴で、冠動脈重症病型が多いのだろうと想定、この心筋梗塞・虚血の糖尿病の臨床病型の反応の違いが、冠動脈疾患死亡のコーディングの異なりへ影響を及ぼしているのだろう。
糖尿病患者の心疾患リスクは、女性、特に70歳以降より40-59歳、喫煙者より非喫煙者、平均収縮期血圧未満で高くなる
卒中のリスクは女性で高く、より若年群で高く、平均BMIより上で高い
さらなる検討が必要だろう。
同様に、成人住民分布頻度は10%として、糖尿病の血管疾患死の11%と推定された。
IFG(空腹時血糖異常)と心疾患・卒中との中等度の関連がみられる
空腹時血糖濃度は、心血管リスクに対して非線形で、3.90-5.59 mmol/L内では有意な影響なし
心疾患リスクは血糖値増加毎に心疾患リスク増加
* 5.60 ~ 6.09 mmol/L: HR 1.11, 95% CI 1.04 ~ 1.18
* 6.10 ~ 6.99 mmol/L: HR 1.17, 95% CI 1.08 ~ 1.26
研究者たちは、リスクは7 mmol/l以上で”意味ある高値”と付記している。
低・中等収入国まで一般化できない
既知・未知の機序を通して心血管疾患に関わる多くの要素が関わる可能性
糖尿病は、冠動脈疾患・虚血性卒中に関して確立したリスク要素だが、年齢、性別、他の通常のリスク要素の影響は不明だった。致死的・非致死的心筋梗塞、虚血性vs出血性卒中との関連など不明であった。
さらに、脂肪症・脂質・血圧と言った通常の血管リスク要素との関連がどの程度なのかは実は不明のままであった。糖尿病無しの患者での脂質異常測定に関する評価など具体的に不明。
空腹時血糖はlog-scaleで線形とされ、心血管疾患に関して何れの値でも影響を及ぼすとされる 7 mmol/Lという値・・・このトピックスに関しても結論づけされてなかった。
血糖:7mmol/L → 126mg/dL
空腹時血糖はどちらかというと、食後血糖に比べると日陰者扱いの昨今・・・だが、このような細かな分析でやはりその意義も明らか
特に下段の表の5mmol/L(90mg/dL)を底とするリスクグラフ随分示唆的である。
by internalmedicine | 2010-06-26 09:42 | 糖尿病・肥満