住民コホート:癌発生・死亡率と末梢血白血球テロメア長

iPadに、「テロメアの帽子」ってのがある・・・今の子供たちにとっては、生物学の常識となってるのだろうか?


染色体終末のTelomeres—nucleoprotein 複合体は、chromosomal integrit維持に重要
40-70歳の前向き住民ベース研究にて、ベースラインに癌のないひとで、Wileitらは、 Bruneck Study(イタリア)の前向き住民研究で、ベースラインの白血球テロメア長と癌・癌死亡率の逆相関関係が報告された。

Telomere Length and Risk of Incident Cancer and Cancer Mortality
Peter Willeit, MD; Johann Willeit, MD; Agnes Mayr, MD; Siegfried Weger, MD; Friedrich Oberhollenzer, MD; Anita Brandstätter, PhD; Florian Kronenberg, MD; Stefan Kiechl, MD
JAMA. 2010;304(1):69-75.


10年フォローアップ(100%のフォローアップ率:1995-2005)
787名中92名(11.7%)で癌発生:発生率 13.3/1000人年

ベースライン・テロメア長短いほど、標準癌リスク因子と独立して頻度増加
(multivariable hazard ratio [HR] per 1-SD decrease in loge-transformed telomere length, 1.60; 95% confidence interval [CI], 1.30-1.98; P < .001)

最長テロメア長群に比較して、多変量補正癌発生HRは、中間長  2.15 (95% CI, 1.12-4.14) 、最短長 3.11 (95% CI, 1.65-5.84) (P < .001).

発生率は、1000人年あたり、最長  5.1 (95% CI, 2.9-8.7) 、中間長 14.2 (95% CI, 10.0-20.1)、最短長 22.5 (95% CI, 16.9-29.9)

様々な環境要素下でも、男女均等に相関が見られた。

さらに、テロメア長は、癌死亡率と相関(multivariable HR per 1-SD decrease in loge-transformed telomere length, 2.13; 95% CI, 1.58-2.86; P < .001) し、致命率の高い癌サブタイプでも相関が見られた。



さて、この明らかになった現象・・・いかに解釈し、治療開発に結びつけるか?


ref.)いろいろテロメアについて
http://bit.ly/cIvMAM
テロメア関係の横断研究ってのは・・・疑問だらけ! テロメア・ドグマに沿った報告多数で、なんらかのバイアスがかかってるのではないかと・・・思っていた。
http://bit.ly/9YSJJD

たとえば・・・

”年齢、他の共役要素補正後も、マルチビタミン使用とテロメア長に相関有り”
Multivitamin use and telomere length in women
American Journal of Clinical Nutrition, doi:10.3945/ajcn.2008.26986
Vol. 89, No. 6, 1857-1863, June 2009


Telomeres、すなわち TTAGGG tandem repeat sequenceは染色体終末の結合たんぱくで、detrimental recombination (有害な配列組み替え)やdegradationを防止する。体細胞では、細胞分裂毎にテロメア長は減少し、cell senescenceや apoptosisにを導く、すなわち、生物学的加齢のマーカーとして用いられている。疫学的にも、酸化ストレスと慢性炎症が、テロメアに関与、微量栄養素がテロメア長に影響を与えるのではないかと仮説にて研究されたもの



今回の報告は、一応、前向き住民ベース研究なので、眉につけるつばが少なくて良いのかもしれない

by internalmedicine | 2010-07-07 11:14 | がん  

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