血管免疫芽球型T細胞性リンパ腫を含む新しい診断クライテリア
2010年 07月 28日
Dr. Mario Colombo ( Istituto Nazionale dei Tumori, Milan, Italy)と Dr. Stefano Pileri(the Bologna University School of Medicine, Bologna, Italy )は、新しい分化型のperipheral T-cell lymphomas (PTCLs) の診断クライテリアを American Journal of Pathology誌に発表
PTCLsは、稀でかつ進行性の非ホジキンリンパ腫で、maturityの異なるT細胞から分化したもの
5年生存率25%程度と予後の悪いもの
autoimmunoblastic T-cell lymphoma (AITL) や peripheral T-cell lymphoma of non-specific origin (PTCL/NOS)といった、末梢T細胞リンパ腫のsubtype分化型で、特異的治療戦略上重要な分類
Tripodo らは、PTCLsの免疫学的微小環境で、AITLsとPTCL/NOS鑑別診断クライテリアを検討
Tヘルパー17(Th17)細胞とマスト細胞が直接AITLsのpro-inflammatory microenvironmentに関連するが、PTCL/NOSでは寄与しないと主張。
AITLはマスト細胞から直接回収され、pro-inflammatory、Th17-にもとづく microenvironmentにより患者の自己免疫異常を導くと述べている。
Tipodoらは、AITLの免疫学的微小環境は、PTCL/NOSと異なり、CXCL-13によるマスト細胞で、Tfh derivationの腫瘍性クローンに基づくことが示唆される。
AITL環境では、浸潤マスト細胞は免疫調整・自己免疫のバランスを崩し、AITL-浸潤組織に生じる微小環境変化を生じることとなる。微小環境パターンを明らかにすることで、治療戦略に関わるインパクトを今後見いだすことがでいるかもしれない。
Tripodo C, Gri G, Piccaluga PP, Frossi B, Guarnotta C, Piconese S, Franco G, Vetri V, Pucillo CE, Florena AM, Colombo MP, Pileri SA: Mast cells and Th17 cells contribute to the lymphoma-associated pro-inflammatory microenvironment of angioimmunoblastic T-cell lymphoma. Am J Pathol 2010 177: 792-802
血管免疫芽球型T 細胞リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma;AITL)
1979年、下山らによって提唱された疾患
WHO分類ではAITL は、多彩な細胞浸潤を呈し、高内皮細静脈および濾胞樹状細胞の著明な増生
を伴い、リンパ節を侵す系統的疾患として特徴づけられる末梢性T 細胞リンパ腫 (peripheral T-cell
lymphoma;PTCL) と定義されている1。
非ホジキンリンパ腫の約1~2%、PTCL の約20%を占める疾患であり、アジア、北米に比べ、ヨーロッパに頻度が高いとされている2)。大部分の症例は全身リンパ節の系統的腫脹を認め、肝脾腫、B 症状、皮疹、関節炎などを伴う進行病期で診断され、胸水、腹水などの体液貯留傾向を示すことが多い。好酸球増多、クームス試験陽性、寒冷凝集素陽性、溶血性貧血、抗核抗体、クリオグロブリン、多クローン性高γ グロブリン血症など種々の検査値異常も認められる。
臨床像や組織像が多彩で、種々の反応性病変、他のPTCL、B 細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫などがしばしば鑑別の対象となり、診断が困難な場合もある。濾胞Th 細胞でみられるCD10、CXCL13 などが高率に陽性になることが報告されており、免疫組織学的な検討が有用と考えられている
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/pdf01/f1l02m14mp1d150008_3.pdf
by internalmedicine | 2010-07-28 15:09 | がん