ICUで人工呼吸外した後どれくらいで死に至るか?

日本では考えられない報告

Predictors of Time to Death After Terminal Withdrawal of Mechanical Ventilation in the ICU
CHEST August 2010 vol. 138 no. 2 289-297


年齢中央値71歳(58-80歳)、44%女性
人口呼吸中断から死亡までの時間・中央値(IQR)は、0.93時間(02.5-5.5時間)

Cox回帰にて、独立した予後の悪い因子は、非白人 (hazard ratio [HR], 1.17; 95% CI, 1.01-1.35)、臓器不全数(per-organ HR, 1.11; 95% CI, 1.04-1.19)、昇圧剤 (HR, 1.67; 95% CI, 1.49-1.88)、IV輸液 (HR, 1.16; 95% CI, 1.01-1.32)、手術vs内科医療(HR, 1.29; 95% CI, 1.06-1.56)

死亡時間まで時間が長いのは高齢者 (per-decade HR, 0.95; 95% CI, 0.90-0.99) 、女性である(HR, 0.86; 95% CI, 0.77-0.97)



単に人口呼吸離脱するだけでなく、離脱後の呼吸苦に対して、モルヒネなどのnarcoticsや鎮静剤を使用するのが普通(American Journal of Critical Care, Vol 5, Issue 5, 331-338)であり、日本でこれをやると・・・

人口呼吸を1度始めると、条件がよほどそろわない限り離脱困難となる。条件がそろわない状況で人口呼吸はずしてしまうと、警察沙汰&マスコミにより全国に名前公表&医道審議会・医師免許あやうくなる

逆に、人口呼吸を続けると・・・家族からかねもうけのためやってんじゃねえの・・・と、すごまれることもある。

リビング・ウィルなど本人の意志がはっきり示されていればある程度、本人の意志を尊重もできるが、制度の不備の責任はすべて現場が引き受けざる得ない・・・悲惨な状況となっている。


日本の医療は表面的なヒューマニズムが全般を覆っている。
終末期医療などは患者本意でなく、患者の家族の気持ち次第となっている。
より患者本位にするためには生前に、終末期にどの程度の医療を希望するかを十分に表明する機会が必要で、真に患者本人の気持ちを尊重する制度でなければならない。
そのためには、この論文のような人口呼吸離脱時にどの程度生存するかなど基礎的資料は必要だろう。



American College of Chest Physicians Consensus Statement on the Management of Dyspnea in Patients With Advanced Lung or Heart Disease Chest March 2010 137:674-691;

AMERICAN THORACIC SOCIETY
Dyspnea
Mechanisms, Assessment, and Management: A Consensus Statement
Am. J. Respir. Crit. Care Med., Volume 159, Number 1, January 1999, 321-340

by internalmedicine | 2010-08-17 15:03 | 医療と司法  

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