高齢者認知機能と知的活動性・・・認知症発症前は予防的に・・・発症後は症候的に増加?

'cognitive reserve':知性の財産という理論・・・知的活動性はこの財産を殖やすことである。

ラジオ傾聴、読書、ゲーム遊び、劇場へ足を運ぶといった、知的活動性の頻度・・これが、認知症発症のない場合の認知機能衰退の予測因子となるという仮説、また、その後の衰退が早まることとと関連する・・・という仮説の検証

Cognitive activity and the cognitive morbidity of Alzheimer disease
R. S. Wilson PhD*, L. L. Barnes PhD, N. T. Aggarwal MD, P. A. Boyle PhD, L. E. Hebert ScD, C. F. Mendes de Leon PhD, and D. A. Evans MD
Neurology 2010, doi:10.1212/WNL.0b013e3181f25b5e
長軸的コホート研究の一部として、地理的一定の高齢者居住者を3年間隔で、全般的認知機能由来の簡単な認知パフォーマンス試験を行い、測定した。
1157名の被験者をベースに解析

治験登録時の認知症はなく、事前評価測定要約から、知的活動性の様々な頻度を有した

登録後、平均5.6年で臨床的評価を行い、フォローアップ5.7年、簡単な認知機能パフォーマンスを試験を3年間隔で行った。

臨床評価時、614名には認知機能障害認めず、395名はMCI、148名はAD

フォローアップ中、認知障害のない人では、知的活動性スケールポイント毎に、全般認知機能減衰年次変化 52%減少 (estimate = 0.029, SE = 0.010, p = 0.003)をもたらす。

MCI群では、認知機能減衰率は知的活動性と関連認めず(estimate = -0.019, SE = 0.018, p = 0.300)

AD群では、平均認知機能減衰年次変化は、知的活動性スケールポイント毎に42%(estimate = 0.075, SE = 0.021, p < 0.001) 増加



問題は、アルツハイマー病発症後、知的活動性の増加はいったいどう説明するのだろうとだれしも疑問・・・”様々な問題で脳に障害が生じたとき、脳は新たな神経回路を構築しようとする。正常な脳は良質な木のように表皮を作り替える。異常な脳は樹皮が少なく、低品質のニスだけとなる。”・・・という身も蓋も無い解説(http://www.usatoday.com/yourlife/health/medical/alzheimers/2010-09-02-braingames02_ST_N.htm


日本で行われている認知症患者への知的ゲームなどの訓練・・・果たして、それに合理性があるのか?・・・考えさせられる報告である。

認知症発症者には、情緒的介入の方がかえって、問題行動など興さず、本人の満足度も増すのではないか?・・・そういう考えはなりたたないのか?

この論文を取り上げている、medpage todayなどは、”脳運動はアルツハイマー病存在下では悪化をさせる”と書かれている。

”アルツハイマー病患者への脳トレーニング”に当てはめていいのかわからないが、一石を投じていることは確か。

by internalmedicine | 2010-09-02 11:05 | 精神・認知  

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