余命限定的な治療不応性呼吸苦患者に酸素療法は必要か?
2010年 09月 06日
経鼻カニューラによる酸素 と 室内空気にてその、呼吸困難改善に対する有効性を検討
結論は、
経鼻カニューラによる酸素投与は、予後短い治療不応性呼吸苦患者に室内空気吸入比較で追加的自覚症状ベネフィットをもたらさない。
個別患者毎に酸素の効果をまず評価して、できるだけ煩わしくない戦略を行うべきである。
Effect of palliative oxygen versus room air in relief of breathlessness in patients with refractory dyspnoea: a double-blind, randomised controlled trial
The Lancet, Volume 376, Issue 9743, Pages 784 - 793, 4 September 2010
Amy P Abernethy, Christine F McDonald, Peter A Frith, Katherine Clark, James E Herndon, Jennifer Marcello, Iven H Young, Janet Bull, Andrew Wilcock, Sara Booth, Jane L Wheeler, James A Tulsky, Alan J Crockett, David C Currow
オーストラリア、USA、UKの9つの外来クリニック成人、二重盲検ランダム化対照トライアル
生命期間が限られている状態、不応性呼吸困難、PaO2>7.3 kPa'(約 55 mmHg)超にランダム割り付け
コンピュータ生成1:1比で、酸素、室内空気に割り付け、7日間2L/分酸素濃縮機を通して投与
少なくとも1日15時間濃縮機使用するよう指導。
ランダム化シークエンスはベースラインPaO2で、4名の患者をbalanced block
プライマリアウトカム測定を息切れ (0—10 numerical rating scale [NRS])、一日朝夕2回測定で行った。
239名のひけ者をランダムに酸素投与群、室内空気投与群に割り付け (酸素, n=120; 室内空気, n=119)。全評価7日間行われたのは、酸素割りつけ 112 (93%) 、室内空気99 (83%)
ベースラインからday 6まで、平均朝呼吸困難度変化は、酸素群 −0·9 points (95% CI −1·3 to −0·5)、室内空気群 −0·7 points (−1·2 to −0·2) (p=0·504)
夜の息切れ:酸素群 −0·3 points (−0·7 to 0·1)、室内空気群 −0·5 (−0·9 to −0·1)(p=0·554)
二群の副事象頻度差違無し。
極端な眠気は、酸素群 12/116(10%)、室内空気群 14/108(13%)
酸素投与群2(2%)で極端な鼻刺激症状、室内空気群7(6%)
1名の患者は極端な鼻出血(酸素投与群)
日本ではまずできないトライアル。終末期ケアといえど、ランダム化トライアルの対象なのはいつもながら感心する。
病院施設では、サチュレーションモニター大好き看護師たちが、終末期ケアにおいて酸素飽和度92%程度で大騒ぎする日常光景。終末期在宅治療でも、在宅酸素療法を保険者側が認めないため、現場でいろいろトラブルが起きている。個別指導で、末期癌患者の1週間以内の酸素療法は過剰請求とされたケースもあると聞く。
酸素療法という比較的単純な介入でも、臨床となると・・・様々なことが起きる
by internalmedicine | 2010-09-06 09:26 | 終末期ケア