COPD治療:抗コリン剤吸入に関わる心血管イベントリスク議論

世界的にCOPDへの注目が高まっているが、卒中、心血管イベント、死亡がその合併症・副事象として把握することもなされはじめ、tiotropiumの安全性にも議論が生じている。

Boehringer Ingelheim自身がFDAに報告した、29のプラセボ対照tiotropiumトライアルにおける、卒中リスクの増加報告を発端とした、心血管系リスクへの疑念。


この議論に関しては、UPLIFT研究(参考:
COPD治療: UPLIFT 4年目:tiotropium死亡率減少効果確認+死亡率解析 2009-11-07 )と、トライアル・プール化データとの安全性報告内容の相違に・・・どうしても注目がいく。

The Safety of Tiotropium — The FDA’s Conclusions
NEJM September 8, 2010
Topics: Drugs, Devices, and the FDA
Theresa M. Michele, M.D., Simone Pinheiro, Sc.D., and Solomon Iyasu, M.D., M.P.H.





Singh らの17のRCTのメタアナリシス検討(JAMA 2008;300:1439-1450[Erratum, JAMA 2009;301:1227-30.])で、心血管リスクの増加が報告された。2倍のトライアルにて補正し、tiotropium HandiHalerとipratropiumの複合検討、プラセボ・能動的プラセボ比較で、心血管イベントリスク1.60(95%信頼区間「CI], 1.22-2.10)。心血管疾患、心筋梗塞、卒中を含めた腫瘍心血管イベントリスク増加と有意に関連すると報告。

一方UPLIFT研究では、心筋梗塞、心血管原因死、全原因死亡減少を、プラセボ比較tiotropium HandiHaler検討で示している。


FDAは、Pulmonary–Allergy Drugs Advisory Committee (PADAC) を2009年11月19日行いこの検討を行った。

PADPACでの決定は、無記名であったが、UPLIFからのデータを卒中シグナル(11 yes votes, 1 no vote) 、心血管シグナル (11 yes votes, 1 abstention)とすることであった。Singhのメタアナリシスに対し、参加者たちは、方法論的限界と表明。潜在的にバイアスを含む選択であり、心血管イベント報告のトライアルに限定されていたという批判である。

一方、UPLIFTトライアルは、大規模で、長期フォローアップ研究で、全副事象イベント、重篤副事象イベント、全原因死亡といった安全性エンドポイントの事前特異化されている研究であり、回収率も高い報告であった。


エビデンス・レベルって話になると、メタアナリシスってだけで、盲信しがちな昨今
メタアナリシスは、その基礎となるデータ抽出が都合良くなされたり、意図せずバイアスがかかる可能性がある以上、その解釈にも注意が必要である。論文に詳細がかかれてない報告では特に注意が必要。

by internalmedicine | 2010-09-09 09:34 | 呼吸器系

 

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