積極的高血圧治療で脳卒中1/3減少へ 日本の高齢者高血圧のガイドラインは間違い

高血圧ガイドラインは医療の道しるべです。その道しるべはあたらしい知見とともに変化するのが当たり前です。その知見は公平・正確なものでなくてはなりません。残念ながら、日本のガイドラインは臨床家にとってそのまんま信用していいかどうかわからないものが多くあります。そのポイントのひとつが高齢者の高血圧の治療指針です。

Blood Pressure and Stroke  An Overview of Published Reviews
Lawes et al., Stroke 35 (3) 776-785.
コホート研究で、北米、西ヨーロッパ、アジア太平洋地域とも、収縮期血圧10mm水銀柱下がるごとに、60-79歳において約1/3のリスク軽減
最低115/75へ向けて降圧により連続的にリスクは減少し、性別・地域、卒中のタイプ、致命的・非致命的事象であるかどうか無関係にすべてその傾向がみられる。
この比例相関は年齢に独立しており、80歳を超えてもこの傾向は強く確実に存在する。RCTのデータから、イベントの平均年齢は70歳、収縮期血圧10mm水銀柱減少で卒中を約1/3減少することが示唆。収縮期血圧mm水銀柱あたり、卒中の相対的benefitは各薬剤間で同等、またbaseline血圧ごとでも、その心血管疾患の既往があるかどうかでも同等。しかし、血圧減少が大きいほどbenefitが大きいというエビデンスがあった。
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日本の高血圧ガイドライン“JSH2000”は、“高齢者高血圧については高血圧専門家のコンセンサスに基づいて,年齢別に治療対象血圧値および降圧目標値を定めた”とかかれておりまして、つまり“Not Evidence based! Consensus based”であって、高齢者の血圧降下を甘めにするようにしてあります。
(JSH2000に基づく高齢者高血圧の解説)
上記論文の内容と相反する部分があるわけで、今後修正されるのでしょう。
JNC-7の方がやはり現状の診療にあっているような気が私はします。



【JNC-7の骨子】 (ref)
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☆ >50歳 収縮期血圧140mmHg(水銀柱)を越える場合は心血管リスクが高い。収縮期血圧より拡張期血圧より影響が大きい。
☆ 心血管リスクは、115/75mmHgからはじまり、20/10mmHg毎にリスクが倍になる。55歳で正常の血圧の人は高血圧になる可能性は90%。 収縮期血圧120-139mmHgあるいは拡張期血圧80-89mmHgは前高血圧(prehypertension)として、心血管疾患の予防する健康増進生活スタイルの改善を考慮すべき。
☆ 合併症のない高血圧の患者の多くはサイアザイド系降圧利尿剤が、単独若しくは多剤と併用で使われるべき。特定の高リスクにより降圧剤の分類を考慮する状態もある(ACE阻害剤、ARB、β遮断剤、カルシウム拮抗剤)
☆ 多くの高血圧患者では以下の目標値をみたすためには2種以上の薬剤治療が必要となる。<140/90mmHg(130/80mmHg:糖尿病、慢性腎疾患) もし血圧が20/10mmHg+なら、開始薬を2剤にすべきで、1剤はサイアザイド系利尿剤が含まれるべき。
☆ 動機付けが重要。ポジティブな経験をして、医師を信頼したときに動機付けも改善する。共感が信頼を形成し、モティベーションを促進する

by internalmedicine | 2004-03-30 09:25 | 動脈硬化/循環器  

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