小3生以下にピロリ菌検診・・・治療まで考慮してなされているのだろうか?

新聞記事なので文字通りではないと信じるし、大学病院の治験で、倫理委員会などパスしているはずで、現場はちゃんとしてるとはおもうが、この記事通りだと、陽性例への対応、特に、多くが保険適応と思えない除菌治療につながるので、その後が心配になる。
子供の除菌に関する日本でのデータは不足している。下痢などの頻度の多い副事象、生じれば重篤な偽膜性大腸炎など・・・の治療にかかわる問題点など十分説明されている・・・この辺の倫理的問題をどのように処理しているのだろうか?
適応外除菌に関しては保険適応外であり、除菌治療に関わる診察料・薬剤料など、それだけでなく、これによって生じた副作用の治療コスト、偽膜性腸炎などは入院を必要とすることもあり、それまで、保険適応外となるとおもう。コストは治験機関が支払うのだろうか?
かなりのコストのかかる治験と思うが・・・利益相反などはどうなっているのだろう。まさか、保険適応にするつもりではないだろうけど・・・

この記事非常に気になる
http://www.kobe-np.co.jp/news/kurashi/0003568617.shtml

胃がん撲滅へ、小3生以下にピロリ菌検診 篠山市 
 篠山市と兵庫医科大ささやま医療センターは29日、胃がんを発症させやすくする細菌「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」の感染経路を解明するため、市内の小学生、幼稚園児らを対象に検診すると発表した。篠山市と同大など3大学による連携事業で、自治体単位でのピロリ菌検診は全国初。胃がん撲滅を目指すという。


 ピロリ菌は5歳以下で感染することが多く、将来的に胃かいようや胃炎などになる恐れがある。また、胃がん患者の約95%が感染しているといい、原因菌になっているとの指摘もある。

 しかし、自覚症状がなく、定期検診などの対象にもなっておらず、感染のメカニズムや経路などは解明できていない。このため、兵庫医科大と愛知医科大(愛知県)、杏林大(東京都)の3大学が感染源の特定に向け、本年度から研究をスタート。篠山市に協力を求めた。

 検診は11月下旬、市内の16校園に通う小学3年生以下の児童ら約1300人のうち希望者を対象に実施。その後、保護者らの一部も検診し、ピロリ菌の型などを調べて感染ルートを追跡する。感染が確認された場合、除菌治療を勧め、医療機関を紹介するという。

 1年後に同じ児童らを再検診し、状態の変化などを調査する。兵庫医科大ささやま医療センターの福田能啓病院長は「感染のメカニズムを解明するとともに、篠山市をピロリ菌ゼロ、将来的には胃がんゼロのまちにしたい」と話した。

 2012年3月に一連の研究結果を発表する予定。

(上田勇紀)


現在のH.pylori除菌保険適応:胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症
http://medical.taishotoyama.co.jp/data/tenp/htm/cl2/tenpu.htm

医療知識に乏しい事業所、ほとんどものを考えない検診・検査機関が、ピロリ菌検査を薦めている場合がある。問題は、検査時のコストや危険性ではないのである。陽性時の対処法が問題なのである。
この記事の場合、特に、子供が対象であり、上記保険適応基準を満たすとは思えない。

繰り返すが、大学病院知見なので、検査だけでなく、治療に関するインフォームド・コンセントなされているとは思うが・・・

記事から見れば、”医療機関を紹介する”というのは、なんだか投げやりに見える対応にも思えるので、倫理的方法は必要十分になされるか気になる。

by internalmedicine | 2010-10-31 16:56 | 消化器  

<< 乳がん:詐欺ピンクリボン運動製... 日本ではどうなってんだろう?リ... >>