メトホルミン:動脈硬化性血栓を有する糖尿病患者で有用?

メトホルミンは、”AMPK (AMP-activated protein kinase) の活性化を介し、肝臓におけ
る糖新生の抑制、および末梢での糖利用の促進、腸管からのグルコース吸収を抑制することによって血糖降下作用を示します。膵β細胞のインスリン分泌を介することなく血糖降下作用を示す”。日本では、乳酸アシドーシスの過度?の危惧、禁忌状態に一時された造影剤との関連で、慎重に、使用せざる得ない状況は続いている。

それゆえかもともと、動脈硬化性血栓症を有する患者の効果に関して、報告が少なく、循環器疾患を主に診療する医師・医療機関で、本来なら使われるべきはずの薬剤なのに使用されてなかった。
さらに、まだエビデンスが十分でないDPP-4阻害関連薬剤使用の広がりが予想され、日本においては、この薬剤は風前の灯火・・・

それでよいのだろうか?

Metformin Use and Mortality Among Patients With Diabetes and  Atherothrombosis
Ronan Roussel; Florence Travert; Blandine Pasquet; Peter W. F. Wilson;
Sidney C. Smith Jr; Shinya Goto; Philippe Ravaud; Michel Marre; Avi
Porath; Deepak L. Bhatt; P. Gabriel Steg; for the Reduction of
Atherothrombosis for Continued Health (REACH) Registry Investigators
Arch Intern Med 2010;170 1892-1899
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/170/21/1892?etoc


【背景】 Metformin は2型糖尿病薬治療として、UKPDS研究における過体重者の死亡率減少故、一次予防として主に使用推奨されている(日本では違うようだが・・・)。しかし、metforminは、心血管疾患状態が考慮される場合にはその安全性考慮から使用考慮がそれよりは少なくなっている。

【方法】 metformin使用が動脈硬化血栓症患者の死亡率の差異と関連するか評価。19691名の糖尿病患者をサンプルとして検討( Reduction of Atherothrombosis for Continued Health (REACH) Registry) 2003年12月1日から2004年12月31日までmetformin使用の有無を問わず
多変量因子補正・propensity scoreをベースラインの差異として考慮し、腫瘍アウトカム測定は2年後の死亡率

【結果】 死亡率はmetforminありで  6.3% (95% confidence interval [CI], 5.2%-7.4%)、なしで 9.8% 8.4%-11.2%) ;補正ハザード比 (HR)  0.76 (0.65-0.89; P < .001)

低死亡率との相関は、各サブグループ横断的に一致
うっ血性心不全既往群 (HR, 0.69; 95% CI, 0.54-0.90; P = .006)
65歳超群 (0.77; 0.62-0.95; P = .02)
estimated creatinine clearance 30 ~60 mL/min/1.73 m2 (0.64; 95% CI, 0.48-0.86; P = .003) (to convert creatinine clearance to mL/s/m2, multiply by 0.0167)

【結論】 Metformin 使用は、二次予防使用時糖尿病患者でも死亡率減少
(現時点で)metformin使用が推奨されてない症例でも同様
Metformin使用は前向きにその生存率評価されるべき

metforminに関してはメトグルコ(TM)販売に経緯、「J-DOIT-3」はヘルシンキ宣言違反?など、日本には製薬会社・厚労省、学会のお偉いさんたちを含む不可思議な動きをみれば、日本の薬事行政や治験の不可思議さの全貌が一部みえてくる。

metforminは、糖尿病薬として、off-label useとしては、prediabetes、PCOS、妊娠糖尿病として使用されている。

by internalmedicine | 2010-11-24 09:10 | 糖尿病・肥満  

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