高齢者うつに対する高照度光照射療法で、うつ気分改善し、睡眠・内分泌リズムも改善
2011年 01月 04日
高照度光照射療法:bright light treatment (BLT)の気分、内分泌リズムへの影響を検討。
Lieveerse R, et al "Bright light treatment in elderly patients with nonseasonal major depressive disorder. A randomized placebo-controlled trial" Arch Gen Psych 2011; 68: 61-70.
自宅ベースの二重盲検プラセボ対照ランダム化トライアル
60歳以上の、MDDを有する8名外来患者をベースライン、3週後、治療終了後3週後で検討
Hamilton Scale for Depression scoreを主要アウトカム測定とする
ITT解析により、プラセボよりBLTによりHamilton Scale for Depression score改善
ベースラインから3週後 7%; 95% confidence interval, 4%-23%; P = .03)
ベースラインから治療終了後3週後 21%; 7%-31%; P = .001)
治療3週後のベースライン比較において、覚醒後からの起床時間は、プラセボ比較で、7%改善(P < .001)、 sleep efficiency は2%改善 (P = .01)、夕方のメラトニン増加steepnessは81%改善 (P = .03)
治療終了後3週後においてベースライン比較では、覚醒からの起床までの時間はやはり、プラセボより3%改善(P = .001)し、24時間遊離コルチゾール値は37%低下 (P = .003)
夕刻唾液中コルチゾール値はBLT治療群で34%減少、対し、プラセボは7%増加(P = .02)
Lieverse らは、2つの仮説でランダム化臨床トライアルを行った
(1) 照度光照射療法でうつ症状改善
(2)うつ症状減少は、概日リズムの改善を解するもので、 睡眠・内分泌リズムも改善する
光照射療法http://www.mayoclinic.com/health/light-therapy/MY00195から・・・無計画・無評価の治療は行うべきではない。
【適応】seasonal affective disorderがまず検討されている。
そして、季節性でないうつ、Obsessive-compulsive disorders、Jet lag、Sleep disorders、Adjusting to a nighttime work schedule、Parkinson's disease、 Dementia、Attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD)と適応の広がりが考慮されている。
【リスク】
頭痛、吐き気、Eyestrain、いらいら・焦燥感、躁、多幸感、bipolar disorder関連症状悪化、Dry mouth、睡眠障害
全身性エリテマトーデスなどの光線過敏、薬物(抗生剤、抗炎症剤など)・サプリメントによる光線過敏、目への悪影響、皮膚がんリスク
【3つの重要要素】
・時間:短時間のブロック、たとえば15分区切りでスタートし、次第に長くする。
30分から2時間へ1日のセッションを、強度に従い増やす
・タイミング:多くでは、目覚めた後の、早朝が最も効果的。夜の療法では睡眠障害をもたらす可能がある。・・・まず、目覚める必要があるので、最も有効な治療スケジュールを・・・
・強度:lux表現。2500 luxから1万luxまで用いられることが多い。light boxの強度は座位からどの程度離れているか、使用可能な時間などで決まる。1万luxでは通常30分必要で、2500luxでは2時間のセッションが必要
光照射療法は、seasonal affective disorder の治療として行われ、次に、非季節性のうつ、不眠へと対象拡大、副作用が少なく、安全と思われている。薬物治療やカウンセリング・精神療法の効果増強としても用いられる。妊娠・授乳中の抗うつ薬回避のため、抗うつ治療薬の減量のためになどでもためされてるらしい。
ただ、全く安全かということと他の物理療法と同じくそれなりの有害事象が考慮され、確実な治療効果においてもそれなりの知識が必要なようだ。
by internalmedicine | 2011-01-04 09:00 | 精神・認知