ビタミンD補充による肺結核治療促進効果;ビタミンD受容体多型のかかわり

日本では、ビタミンD過剰状態がもうひとつの問題なので、行うにしても、ビタミンD濃度くらいは測定しておく必要があるだろう。特に、肺結核と高カルシウム血症の合併は稀ではないのだから・・・という前置きをしておいて・・・

ロンドンの結核菌塗喀痰塗抹陽性肺結核患者のadjucnctiveなビタミンD投与の多施設ランダム化対照トライアル

High-dose vitamin D3 during intensive-phase antimicrobial treatment of pulmonary tuberculosis: a double-blind randomised controlled trial
The Lancet, Early Online Publication, 6 January 2011




標準結核治療開始後ベースライン、14、28、42日目に146名;ビタミンD 2.5mg v プラセボ
プライマリエンドポイントは喀痰培養のconversionまでの期間
ビタミンD受容体の TaqI と FokI polymorphismによるgenotype分け

喀痰培養conversion期間中央値は、介入群 36.0日、プラセボ 43.5日(補正 hazard ratio 1·39, 95% CI 0·90—2·16; p=0.14)

TaqI genotypeはビタミンDサプリメントにより喀痰培養conversion期間の変化をもたらす (pinteraction=0·03)。

tt genotypeの患者にのみ反応促進見られる (8·09, 95% CI 1·36—48·01; p=0·02)

FokI genotypeはビタミンDサプリメント効果に影響与えない (pinteraction=0·85)

56日目の平均ビタミンD濃度は、介入群 101.4 nmol/L、プラセボ群 22.8 nmol/L(95% CI for difference 68·6—88·2; p<0·0001)



ビタミンDは、高齢者脆弱性、近骨格筋、免疫、心血管疾患・感染症他様々な慢性疾患との関連が取りざたされている。低濃度ビタミンD濃度に関わる遺伝子の検討なども行われている。

結核症という病気に積極的にビタミンD補給したときに、細菌消失にいかに関わるか・・・具体的な検討がなされた。

かたや、結核治療は耐性との戦いである。ビタミンDの活性代謝体であるカルシトリオールがin vitroの研究で抗抗酸菌作用を有すること。そして、これは、reactive nitrogen や reactive oxygen を介する作用で、肺結核空洞化の病態に影響するmatrix metalloproteinase enzymeを抑制する働きも考えられる。
また、ビタミンDへの遺伝子反応のtranscription調整により、ビタミンD受容体結合によるカルシトリオールは免疫系、をmodulateする。ヒトビタミンD受容体には多型性があり、カルシトリオールによる結核菌の貪食作用促進との関連が認められていた。


ビタミンD、とくにカルシトリオールを介した免疫応答に関する検討が、より実地的に行われた訳である。

by internalmedicine | 2011-01-08 08:47 | 感染症  

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