”HCTZは他種降圧剤比較で降圧降下が劣る”という現実・・・第一選択あり得ない
2011年 01月 26日
最近使われ始めているHCTZ合剤を含め、hydrochlorothiazide (HCTZ) 12.5-25mg/日が多くの降圧降下目的に最頻用されている。この投与量で、心疾患発作、卒中、死亡減少をもたらすというエビデンスは存在しないと・・・Dr Franz Messerli (St Luke Roosevelt Hospital, New York, NY)。
CLINICAL RESEARCH: CARDIOVASCULAR PHARMACOLOGY
Antihypertensive Efficacy of Hydrochlorothiazide as Evaluated by Ambulatory Blood Pressure Monitoring
A Meta-Analysis of Randomized Trials
J Am Coll Cardiol, 2011; 57:590-600, doi:10.1016/j.jacc.2010.07.053
HCTZ12.5-25 mgという投与量の、1234名の患者対象の14研究、50 mgの投与量の 229名の患者対象の5研究。
24-h血圧は、12.5-25 mgで収縮期 6.5 mm Hg (95% 信頼区間: 5.3 to 7.7 mm Hg)、拡張期 4.5 mm Hg (95% 信頼区間l: 3.1 to 6.0 mm Hg)で、24-h血圧減少に関して、ACE阻害剤 (mean BP reduction 12.9/7.7 mm Hg; p < 0.003)、ARBs (mean BP reduction 13.3/7.8 mm Hg; p < 0.001)、ベータ遮断剤 (mean BP reduction 11.2/8.5 mm Hg; p < 0.00001)、カルシウム拮抗剤 (mean BP reduction 11.0/8.1 mm Hg; p < 0.05)に比較して劣性である。
HCTZ 12.5 mg (5.7/3.3 mm Hg) 、HCTZ 25mg(7.6/5.4 mm Hg)間で収縮期血圧 (5.7/3.3 mm Hg) 、拡張期血圧(p = 0.15) とも減少差無し。
しかし、HCTZ 50mgでは、24-h血圧は他薬剤に比べ有意に高値(12.0/5.4 mm Hg) で、比較差が明らかにある。
”HCTZは降圧降下が怪しい”というのは、以前から指摘されていた。
この話を知らないとしたら、高血圧治療から手を引いてもらいたい位だ。
降圧治療: HCTZ ≠ chlorthalidone・indapamide ・・・ HCTZを第一選択にするな! 2009-06-16
ACCOMPLISH: 高齢者・CKD:ACE阻害剤+CCBがACE阻害剤+降圧利尿剤より有効 2010-02-19
サイアザイド系薬剤は動物種特異的で、動物知見が役立たない可能性がある(前向きコホート:ロサルタン+HCTZ有無比較:メタボリックシンドローム高血圧患者比較 2010-02-23)
ACCOMPLISHトライアル:高リスク高血圧患者のACE阻害剤併用には降圧利尿剤よりアムロジピン 2008-12-04
日本各地の講演している循環器・高血圧関係のおえらいさんたちは、スポンサーに遠慮してか?この問題を完全にスルーしてきている。
そして、HCTZが降圧薬として劣るという現実が明らかになっても、かれらには何の実害もないだろう・・・なんせ、ARB+カルシウム拮抗剤合剤が市場に出ているから、代わりはいくらでもある。ARBへの批判を無視した形で行われる講演会・・・
まぁ、講演会の演者や製薬会社にだまされない・・・スキルを、プライマリケア医は身につけなければならない
by internalmedicine | 2011-01-26 08:36 | 動脈硬化/循環器