”HCTZは他種降圧剤比較で降圧降下が劣る”という現実・・・第一選択あり得ない

愚かな日本の薬事として象徴的なのが・・・”ダイグロトライド錠”が市場から消えたこと。”HCTZ ≠ chlorthalidone・indapamide”ということを無視して、ALLHAT治験が生かされず、誤解から誤解、あるいは悪意から悪意、あるいは、無知から無知のため、こういう事態となった。循環器系・高血圧の医師たちは猛省すべき。・・・このことは、関係者であっても、反省どころか、認識さえされてないのでは?最新の治験結果で議論することだけをかっこいいとでも思ってるのだろうか?

最近使われ始めているHCTZ合剤を含め、hydrochlorothiazide (HCTZ) 12.5-25mg/日が多くの降圧降下目的に最頻用されている。この投与量で、心疾患発作、卒中、死亡減少をもたらすというエビデンスは存在しないと・・・Dr Franz Messerli (St Luke Roosevelt Hospital, New York, NY)。

CLINICAL RESEARCH: CARDIOVASCULAR PHARMACOLOGY
Antihypertensive Efficacy of Hydrochlorothiazide as Evaluated by Ambulatory Blood Pressure Monitoring
A Meta-Analysis of Randomized Trials
J Am Coll Cardiol, 2011; 57:590-600, doi:10.1016/j.jacc.2010.07.053


HCTZ12.5-25 mgという投与量の、1234名の患者対象の14研究、50 mgの投与量の 229名の患者対象の5研究。
24-h血圧は、12.5-25 mgで収縮期 6.5 mm Hg (95% 信頼区間: 5.3 to 7.7 mm Hg)、拡張期 4.5 mm Hg (95% 信頼区間l: 3.1 to 6.0 mm Hg)で、24-h血圧減少に関して、ACE阻害剤 (mean BP reduction 12.9/7.7 mm Hg; p < 0.003)、ARBs (mean BP reduction 13.3/7.8 mm Hg; p < 0.001)、ベータ遮断剤 (mean BP reduction 11.2/8.5 mm Hg; p < 0.00001)、カルシウム拮抗剤 (mean BP reduction 11.0/8.1 mm Hg; p < 0.05)に比較して劣性である。

HCTZ 12.5 mg (5.7/3.3 mm Hg) 、HCTZ 25mg(7.6/5.4 mm Hg)間で収縮期血圧 (5.7/3.3 mm Hg) 、拡張期血圧(p = 0.15) とも減少差無し。

しかし、HCTZ 50mgでは、24-h血圧は他薬剤に比べ有意に高値(12.0/5.4 mm Hg) で、比較差が明らかにある。





”HCTZは降圧降下が怪しい”というのは、以前から指摘されていた。
この話を知らないとしたら、高血圧治療から手を引いてもらいたい位だ。

降圧治療: HCTZ ≠ chlorthalidone・indapamide ・・・ HCTZを第一選択にするな! 2009-06-16

ACCOMPLISH: 高齢者・CKD:ACE阻害剤+CCBがACE阻害剤+降圧利尿剤より有効 2010-02-19

サイアザイド系薬剤は動物種特異的で、動物知見が役立たない可能性がある(前向きコホート:ロサルタン+HCTZ有無比較:メタボリックシンドローム高血圧患者比較 2010-02-23

ACCOMPLISHトライアル:高リスク高血圧患者のACE阻害剤併用には降圧利尿剤よりアムロジピン 2008-12-04


日本各地の講演している循環器・高血圧関係のおえらいさんたちは、スポンサーに遠慮してか?この問題を完全にスルーしてきている。

そして、HCTZが降圧薬として劣るという現実が明らかになっても、かれらには何の実害もないだろう・・・なんせ、ARB+カルシウム拮抗剤合剤が市場に出ているから、代わりはいくらでもある。ARBへの批判を無視した形で行われる講演会・・・

まぁ、講演会の演者や製薬会社にだまされない・・・スキルを、プライマリケア医は身につけなければならない

by internalmedicine | 2011-01-26 08:36 | 動脈硬化/循環器  

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