急性卒中の降圧治療は有益性ない

卒中患者の血圧コントロールは、古くからの問題

卒中急性状態での血圧コントロールに関して、至適管理法は不明(Cochrane Database Syst Rev 2010; 7. CD002839.)であるが、一応、高血圧許容というのが現行の流れ。

でも、日本では、後述のごとく、訴訟沙汰に巻き込まれ、当事者に疲弊をもたらす事態が頻発している。

ARBは、梗塞巣のサイズ減少、重度な神経学的状態改善効果が期待され、治験がなされた。
しかし、結果は、意に反して、効果なく、一部、有害性が指摘された。

The angiotensin-receptor blocker candesartan for treatment of acute stroke (SCAST): a randomised, placebo-controlled, double-blind trial
The Lancet, Early Online Publication, 11 February 2011
doi:10.1016/S0140-6736(11)60104-9Cite or Link Using DOI


ランダム化プラセボ対照化二重盲検トライアル被験者 9ヶ国146センター
急性卒中(虚血性・出血性)で、140mmHg以上の患者で、発症後30時間以内
カンデサルタンとプラセボを1:1で7日間割り付け
4mgから16mgへ3-7日で増量
ランダム化はセンター層別化、カンデサルタンとプラセボを6つのパックのブロックで行った。
被験者も研究側も治療割り付けマスク
2つの複合プライマリ効果変数:6ヶ月内の心血管死亡、心筋梗塞、卒中;6ヶ月後の機能的アウトカム(modified Rankin Scale)
ITT解析

ランダム割り付け :カンデサルタン1017、プラセボ 1012
6ヶ月後2004例のデータ状況把握(99%; 1000 candesartan, 1004 placebo).

7日治療期間中、血圧はプラセボ比較で有意に減少 (mean 147/82 mm Hg [SD 23/14] in the candesartan group on day 7 vs 152/84 mm Hg [22/14] in the placebo group; p<0·0001)

6ヶ月フォローアップ後、複合血管エンドポイントに差無し (candesartan, 120 events, vs placebo, 111 events; adjusted hazard ratio 1·09, 95% CI 0·84—1·41; p=0·52)

機能的アウトカム解析はカンデサルタン群でpoor outcomeのリスクが高まった(adjusted common odds ratio 1·17, 95% CI 1·00—1·38; p=0·048 [not significant at p≤0·025 level])

すべての事前層別化セカンダリエンドポイントに関して、観察効果同等(全原因死亡、心血管死、虚血性卒中、出血性卒中、心筋梗塞、卒中発症、有症状低血圧、腎不全を含む)とアウトカム (7日目のScandinavian Stroke Scale scoreと6ヶ月時点での Barthel index at 6 months)で、事前層別化サブグループでも差の影響を示すエビデンス無し。

フォローアップ中、カンデサルタン群9(1%)とプラセボ5(<1%)の有症状低血圧、腎不全:カンデサルタン群 18(2%)、プラセボ群 13(1%)



ASA: Early BP Lowering No Help in Acute Stroke
http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/ASA/24829




私が勤務医の時代は、看護師がやたらと、血圧にうるさくて、しかたなく、血圧>180 アダラート使用などとしてしまうと、看護師クレーム・ベースド・メディスンがなされてた時代があった。ガイドラインのおかげで、病棟紛争が少々和らいでるだろう。

一方では、アダラート舌下騒動や降圧剤投与による医療訴訟騒ぎがあり、中には刑事訴追まで遺族から追求されている。検察審議会なるものも存在し、いつ、この騒動に巻き込まれるか分からない恐怖・・・

ペルジピンでさえ追求されているようだから・・・油断できない。

・・・訴訟社会・・・日本の医療は司法によりつぶされている。

脳卒中ガイドラインの血圧コントロールのところでは、
脳梗塞急性期では、収縮期血圧>220mmHgまたは拡張期血圧>120mmHgの高血圧が持続する場合や、大動脈解離・急性心筋梗塞・心不全・腎不全などを合併している場合に限り、慎重な降圧療法が推奨される(グレードC1)。
等記載されている。

by internalmedicine | 2011-02-12 11:07 | 中枢神経  

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