農園住居子供の喘息発症:微生物環境多様性があるほどリスク減少
2011年 02月 24日
衛生仮説というおおざっぱな言い方が悪いのか、寄生虫専門家の寄生虫感染が減ったからという断言的意見への反感もあり気持ちもわかるのだが、衛生仮説に関してずいぶんな言われ方で反論されることもある。そういう連中の論旨は非科学的だと・・・何も根拠なく反論されると、ムッとして終わり。喘息やアレルギー全般に関して全責任があると言う訳ではないだろうに・・・
喘息と大気中エンドトキシンの関係などの報告もあり(新しい衛生仮説支持論文 1歳児の湿疹は2-3ヶ月時のリビングルームのエンドトキシンと相関 2004-07-14)、この衛生仮説の立証らしきものが報告されつつある一方、逆に、高環境中エンドトキシン濃度は喘息頻度を増加させる 2005-11-22 という報告も・・・
報告のばらつきに関しては、免疫寛容の時期がポイントになるのかも知れない(免疫寛容のポイントは学童期か? N Engl J Med 2002; 347:869-877September 19, 2002)
紹介の論文は、あらたな微生物細菌検出法も用いた、微生物環境曝露と小児喘息の関連の報告。
用いられた研究方法は・・
・PARSIFAL (Prevention of Allergy — Risk Factors for Sensitization in Children Related to Farming and Anthroposophic Lifestyle) :マットレス埃のサンプルによる培養では同定不能な環境細菌検出法である、single-strand conformation polymorphism (SSCP) によるスクリーニング
・GABRIELA (Multidisciplinary Study to Identify the Genetic and Environmental Causes of Asthma in the European Community [GABRIEL] Advanced Study) :子供の部屋の埃を細菌・真菌を培養法で同定
Exposure to Environmental Microorganisms and Childhood Asthma
N Engl J Med 2011; 364:701-709February 24, 2011
両研究とも、農園住居の子供は、対照群に比較して、喘息・アトピー頻度が低く、環境的微生物の多様性が暴露が大きい。
次に、微生物暴露の多様性は喘息リスクと逆相関(odds ratio for PARSIFAL, 0.62; 95% confidence interval [CI], 0.44 to 0.89; odds ratio for GABRIELA, 0.86; 95% CI, 0.75 to 0.99)
加えて、周辺暴露が多いほど、喘息リスクと逆相関し、真菌種eurotium属暴露や、 Listeria monocytogenes、 bacillus species、 corynebacterium speciesを含む細菌種暴露に逆相関する(補正オッズ比, 0.37; 95% CI, 0.18 ~ 0.76、 0.57; 95% CI, 0.38 ~ 0.86)
コントロール不良喘息患者:気道過敏性と気道の細菌の関連 2011-02-20では、コマモナス科、スフィンゴモナス科、オキサロバクター科細菌との関連が逆に取りざたされている。16S ribosomal RNA amplicon concentrations (a proxy for bacterial burden) と bacterial diversity ってのが使われていた。
by internalmedicine | 2011-02-24 08:42 | 呼吸器系