シロリムスは、肺リンパ脈管筋腫症に有効

肺リンパ脈管筋腫症(pulmonary lymphangioleiomyomatosis,pulmonary LAM)

診断基準:http://www.nanbyou.or.jp/pdf2/120_2_l_i.pdf
難病情報センター:http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/120_i.htm

Lymphangioleiomyomatosis (LAM) は、進行性の嚢胞性疾患で、女性に多く、rapamycin (mTOR) signalingの不適正活性化に起因し、細胞増殖・リンパ管血管異常を来すもの。
ラパマイシンの細胞内標的たんぱく質であるmammalian Target of Rapamycin (mTOR)は
分子量290Kの巨大なセリン・スレオニンたんぱく質リン酸化酵素であり、これまでの研究
実績から、mTORを介するシグナル伝達系が、細胞を取り巻く環境中のアミノ酸バランスを
感知し、細胞成長(細胞のサイズ)を制御していると考えている(pdf, 参考)。

シロリムス:Sirolimus (rapamycin) は、名の由来通り、mTORを阻害するため、phase 1-2トライアルが進められていた。そして、日本でも治験参加されていた。



Efficacy and Safety of Sirolimus in Lymphangioleiomyomatosis
National Institutes of Health Rare Lung Diseases Consortium and the MILES Trial Group
March 16, 2011 (10.1056/NEJMoa1100391)


中等度肺機能障害を有する89名のLAMEで、12ヶ月ランダム化二重盲検比較で12ヶ月観察期間にてフォロー。プライマリエンドポイントは、FEV1の変化率

治療期間中、FEV1 slopeは、 プラセボ群(43名) -12±2 ml/月、対し、シロリムス群(46名)は 1±2ml/月(P<0.001)
2群間の絶対的差は、治療期間FEV1変化率で153mLで、登録時平均FEV1の11%程度。

プラセボ群比較で、シロリムス群はベースラインから12ヶ月でで、FVC、FRC、血中vascular endothelial growth factor D (VEGF-D)、QOL、機能的パフォーマンス改善。

6分間歩行距離、DLCOの群間有意差認めず

シロリムス中止後、肺機能減衰は元に戻り、プラセボ群と平行となった。

副作用はシロリムス群に多いが、重度な副事象イベント頻度い差はない。


私個人は、”女性の”肺気腫”やブラをみたら、LAMを疑えと思っていたが、実際に観たのは疑い例の数例だけ・・・画期的薬物として判断してよさそうな報告なので、今後、この病気の医療関係者・患者向け啓発が必要となるだろう。もちろん、オーファンドラッグとなるだろうが、承認を早めにしてほしい。

by internalmedicine | 2011-03-17 09:39 | 呼吸器系  

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