【研修医】労働時間短縮でも、トレーニングの質、医療の質に改善みられず :システマティックレビュー
2011年 03月 26日
”duty hour”を週80時間未満に労働時間を短縮することで、それまでの、患者のアウトカムやトレーニングのアウトカムに逆相関を来すわけではないとシステマティックレビュー
さらに、ヨーロッパのように、週48時間のような極端な制限が良好なアウトカムをもたらすかしめした今までの報告には研究自体の質が低く、結論づけ出来るレベルではないとS R Moonesingheら。
エディトリアルでは、Leora Horwitzが研修医の労働時間短縮が患者のベネフィットにつながらないかは、不適切な規則、より忙しくなった医者たちの存在、ケアの不連続性などがその原因と考えられると説明している。
Impact of reduction in working hours for doctors in training on postgraduate medical education and patients’ outcomes: systematic review
BMJ 2011; 342:d1580 doi: 10.1136/bmj.d1580 (Published 22 March 2011)
Cite this as: BMJ 2011; 342:d1580
【目的】 卒後医学研修中の労働時間短縮が教育や臨床的アウトカム客観的指標に影響を与えるか?
【デザイン】 Systematic review.
【データソース】 Medline、 Embase、 ISI Web of Science、 Google Scholar、 ERIC、 SIGLE を、言語制限関係なく、1990-2010年12月まで出版の文献で調査。
Reference lists and citations of selected articles.
【選択】 卒後研修に関わるアウトカム、患者安全性、臨床的アウトカムといった客観的数値を用いたduty hourのインパクト評価の研究
【結果】 72 の研究を検討対象。38のレポートトレーニングアウトカム、3つの両方報告
80時間を超えた時間(米国で推奨時間)からの短縮により患者安全性へ逆影響を見いだすことが出来ず、卒後トレーニングへの影響は限定的だった。
ヨーロッパでの56時間、48時間未満という労働時間制限に関しての報告は、qualityが低く、相反する結果を伴うもので、明確な結論付けが出来なかった。
【結論】USにおいて、 80時間からの労働時間は、患者や卒後トレーニングへ逆影響みられず。
56時間、48時間制限といった英国での制限の影響は質の高い報告として評価に耐えるものではなかった。
さらなる研究が必要で、特にEUでは、duty hourに関する大規模多施設評価が客観的教育・臨床的指標を用いての検討が必要。
ほとんど家に帰れず、ふらふらのまま診療を行わざるえない研修医はかつて存在してたし、全体的に観れば社会的損失にもつながる状況が放置されていた時代があった。
新しい研修制度ができて、その後の医師としての方向性や質を決める貴重な1-2年間なのに、”9時に病院に来て、5時になるとカンファレンス途中で帰る研修医、できればカンファレンスにいてくださいとお願いしても、無理強いすれば、いいんですかと研修医から恫喝さえされる”という話もある。まあ極端な例にしろ、現時点では、以前に比べ、実質研修時間はかなりみじかくなったことはタシかと思う。
日本でも、研修医の"duty hour"と臨床的アウトカム・研修の質を客観的に評価することが必要。まぁ、労働基準法など法律上の問題もあるし、まあ例外にするには、障壁が大きく多すぎる・・・
by internalmedicine | 2011-03-26 09:12 | 医療と司法