高齢肥満者:食事による減量と運動の組み合わせで、身体機能改善、
2011年 03月 31日
だが、体重減少介入に関するリスク/ベネフィットに関わる臨床トライアルのエビデンスは少ないと序文の書かれている。高齢老人における、運動と体重減少に関する臨床的アプローチ介入はまだcontrovertialであり、BMI増加による健康リスク減少があるかは未だ結論がない(Villareal DT, Apovian CM, Kushner RF, Klein S. Obesity in older adults: technical review and position statement of the American Society for Nutrition and NAASO, The Obesity Society. Am J Clin Nutr 2005;82:923-934)。高齢老人は、食事・運動習慣が長きにわたって蓄積されているため、体重減少到達困難であり、さらに、体重減少が、脆弱性を悪化させ、骨格筋萎縮の原因となる加齢関連筋肉量減少を悪化させるのではないかという懸念があったが、短期研究では、減量と運動が肥満老人の脆弱性を緩和したという報告があった。
この報告は、持続的体重減少と定期的運動を組み合わせることで、身体機能、体組成、QOL回zんwおもたらすか、また、減量と運動がそれぞれ身体機能改善、身体脆弱性緩和に役立つことを証明したもの
Weight Loss, Exercise, or Both and Physical Function in Obese Older Adults
Dennis T. Villareal, M.D., Suresh Chode, M.D., Nehu Parimi, M.D., David R. Sinacore, P.T., Ph.D., Tiffany Hilton, P.T., Ph.D., Reina Armamento-Villareal, M.D., Nicola Napoli, M.D., Ph.D., Clifford Qualls, Ph.D., and Krupa Shah, M.D., M.P.H.
N Engl J Med 2011; 364:1218-1229March 31, 2011
1年のランダム化対照化トライアルで、107名の65歳以上の肥満者の体重減少、運動の影響を、独立あるいは組み合わせの効果評価
ランダムに対照群、体重マネージメント群(diet)、運動群(exercise)、体重マネージメント+運動(diet-exercise)に分けて、プライマリアウトカムをmodified Physical Performance Testとし、セカンダリアウトカムを、fraility、体組成、骨密度、特異的運動機能、QOLとした。
運動は、週3回の90分グループでのexercise
Dietは、1500カロリー+ビタミンD
結果は、93(87%)け研究完遂。
ITT解析にて、Physical Performance Testスコアは、diet群、exercise群より、diet-exercise群の方が高得点 (ベースラインからの増加 21% vs. 12%、 15%);対照群よりスコアは3つの全グループとも改善(1%増加)(グループ間差P<0.001)
さらに、ピーク最大酸素消費量はdiet群やexercise群よりdiet-exercise群で改善 (増加率 17% vs. 10% and 8%,; P<0.001); 高スコアが身体機能の良さを反映するFunctional Status Questionnaireスコアでは、diet群よりdiet-exercise群でスコアより改善 (増加 10% vs. 4%, P<0.001)
体重は、diet群で10%減少、diet-exercise群で9%減少するが、exercise群、対照群では体重減少せず(P<0.001)
除脂肪体重(Lean body mass) と骨密度は、diet群に比べ、diet-exercise群で減少 (減少率 diet–exercise 群 3% と 1%vs. diet群 減少 5% と 3%; 両比較P<0.05)
筋力、平衡、歩行機能はdiet-exercise群で一致して改善(P<0.05)
副事象は、運動由来の筋骨格筋の外傷が少数あり
”ロコモティブ症候群(運動器症候群)"なるものの肯定? いや、否定と思っていいと思う。
・上記論文序文にあるごとく、”高齢老人における、運動と体重減少に関する臨床的アプローチ介入はまだcontrovertial”とされ、日本整形外科学会などが主張するほど、高齢者老人への運動介入は確定的な話ではないのだ。
・日本整形外科学会は、”コモ対策としての運動「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」”など運動介入だけに着眼し、減量を必要とする肥満や、逆に、栄養不良老人等の他の基礎的身体疾患への配慮がない。きわめて偏った概念・対処法となっている。はたして、この介入の”リスク・ベネフィット”を説明するエビデンスが存在するのだろうか?・・・答えは明らかに”No!”である。
・体重減少目的とした食事・栄養介入がが必要であることを上記論文は示しており、肥満・高齢者においては、減量は食事介入主体にすべきであり、さらに運動との組み合わせが必要と述べている。食事内容に関しては耐糖能や塩分感受性、食事嗜好性なども配慮が必要。やせた老人でもその配慮が必要だろう。”ロコモ”には包括的な介入概念が欠如している。個別化した栄養指導とともに、おそらく、個別化された運動指導が必要なのである。
”運動を勧めるな!”というのかと偏執的に揚げ足取りされそうだが、そうではなく、老人の"frailty”問題介入には、その他の様々な身体的、心理的要素を加味した上で、個別的な運動指導の方向性を打ち立てるのが王道のはず・・・暴走中の”ロコモ”ってのは方向性は一部正しくても、”老人の心理身体的脆弱性”を包括的に扱ってない分だけ、弊害が大きい。この概念は誤りだと・・・私は断定したい。
リハビリテーションの概念では、個別化が基本であり、テーラーメイドなのだ。介護保険も、整形外科学会も、その基本概念を全く無視し、暴走を続けている。
by internalmedicine | 2011-03-31 09:56 | 糖尿病・肥満