増加する米国のオピオイド過剰服薬死:癌患者に多く、処方量多いほど多い
2011年 04月 06日
非がん患者への投与が進み、オピオイドによる死亡率増加が1995年から2004年に増加し、ウェストバージニアでは剖検によると44%が過剰投与による死亡と判明するなど、社会問題化している。
Bohnertらは、オピオイド処方パターン、たとえば、頓服と計画定期的用量用法処方との差などと、オピオイド関連死亡の関連を検討した。
疼痛オピオイド処方患者において、オピオイド処方量が多いほど、オピオイド過剰投与死のリスクが増加した。
癌患者でのオピオイド過剰投与死の報告が多いことに驚く。
Association Between Opioid Prescribing Patterns and Opioid Overdose-Related Deaths
JAMA. 2011;305(13):1315-1321.
【目的】 最大1日オピオイド処方量と処方スケジュール(”頓服”、定期的、併用)とオピオイド過剰投与死の関連を検討; 癌、慢性頭痛、急性疼痛、不正ドラッグ使用疾患患者
【デザイン】 Case-cohort study.
【セッティング】 Veterans Health Administration (VHA), 2004 through 2008.
【被験者】 すべての意図しない処方オピオイド過剰投与死者 (n = 750)と、患者ランダムサンプル (n = 154 684) 、2004、2005年の医療サービスを受け、疼痛のためオピオイド治療受けた対象者
【主要アウトカム測定】 非意図的処方オピオイド過剰投与死亡におけるオピオイドレジメン (dose and schedule)、臨床診断、年齢、性、人種、民族、合併症補正サブグループ
【結果】 オピオイド治療中の研究期間中致死的過剰投与頻度は、推定 0.04%
過剰投与死リスクは直接オピオイド連日処方最大量と相関している。
100mg/日以上の最大投与処方量は、比較補正ハザード比1mg/日から20mg/日のカテゴリー比較で、
・不正薬物使用疾患では、補正ハザード4.54 (95% 信頼区間 [CI], 2.46-8.37; absolute risk difference approximation [ARDA] = 0.14%)
・慢性頭痛疾患では、7.18 (95% CI, 4.85-10.65; ARDA = 0.25%)
・急性疼痛 6.64 (95% CI, 3.31-13.31; ARDA = 0.23%)
・癌患者 11.99 (95% CI, 4.42-32.56; ARDA = 0.45%)
頓用と定期計画投与法での使用過剰リスクとは関連せず
同様な報告が
Opioid Prescriptions for Chronic Pain and Overdose
A Cohort Study
Ann Int Med. Jan. 19, 2010 vol. 152 no. 2 85-92
日本の医療用麻薬使用量が異常に少ないと、厚労省、医者を積極的に批判しているが・・・
http://ganjoho.ncc.go.jp/data/public/statistics/backnumber/1isaao000000068m-att/date11.pdf
厚労省のワンパターン・ステレオタイプな医者向け批判は、医療者として甘んじて受けたいが、
上記使用過剰リスクについて、厚労省は対策を講じるべきであろう!
そして、使用促進上生じた、過剰投与死に関して、現場に責任を押しつける毎度おなじみのやり方はいいかげんやめてほしいものだ
”オピオイド使用頻度”に言及する場合、”オピオイド過剰服薬死”検討を加えなければ意味のない報告である。
参照:医療用麻薬適正使用ガイダンス ~がん疼痛治療における医療用麻薬の使用と管理のガイダンス~
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/other/iryo_tekisei_guide.html
by internalmedicine | 2011-04-06 11:14 | がん