たこつぼ心筋症は長期予後絶対的に良好とは言えない

1990年頃文献報告され、2004年の中越地震時の報告から、2005年のNEJMでの報告、そして、2007年(平成19年)の新潟県中越沖地震の時には、この臨床的概念が広がってたため、多くの医師たちが基礎知識を有していた。今回の東日本震災時はさらにメディアの報道で一般にも広まったと思う。


ただ、”予後良好な疾患”と記載されることが多いが・・・果たしてホントか?


退院時心機能はほぼ全例正常となるが、フォロアップ2年で再入院率25%、一般住民との死亡率比較で3-4倍となるなど影響はあるようだ。

今回、被災人口が多いだけに、多くのTTCが発症していると思われる。短期的には正しい診断と、長期的には、適切にフォローされることを願う。


ストレス誘起性、すなわち たこつぼ心筋症 (TTC)は、レアな急性心疾患
一過性の左室機能障害を来すもので、原因・アウトカム不明で、TTCの長期アウトカムを評価した報告。

Natural History of Tako-Tsubo Cardiomyopathy
Tuscany Registry of Tako-Tsubo Cardiomyopathy
CHEST April 2011 vol. 139 no. 4 887-892


入院時平均初期左室駆出率(LVEF)は、36% ± 9%。2名の患者は入院中、治療不応心不全で死亡。
1名をのぞいて生存退院者は、完全な左室機能回復。
フォローアップ (2.0 ± 1.3 年)時、64名(55%)のみが無症状
再入院率は高く25%で、胸痛(6例)、呼吸苦(5例)が最も多い原因であった。
再発性のTTCが2例にみられた。
11名が死亡で、7例が心血管原因死
重度左室機能障害 (LVEF ≤ 35%)の有無で、死亡率に有意な差が認められない(12% vs 7%; P = .284) し、他の臨床的イベントでも差がない
標準死亡率:standardized mortality ratio (SMR) methodを用いた一般住民と比べ、TTCの死亡率は年齢、性別比較で認められる。
SMRはTTCでは、 3.40 (95% CI, 1.83-6.34)
Cox解析にて独立した予測因子として有意なのは Charlson comorbidity index (hazard ratio, 1.786; P = .0001)で、初期左室機能の程度は死亡因子としては認められない



意外と、たこつぼ心筋症は長期予後良好とは言えないようだ



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by internalmedicine | 2011-04-07 11:28 | 集中・救急医療  

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