ウィルス性肺炎

セミナー的解説記事

ウィルス性肺炎は子供の病気と思いきや高齢者に多いことが分かる。


Viral pneumonia
The Lancet, Volume 377, Issue 9773, Pages 1264 - 1275, 9 April 2011
doi:10.1016/S0140-6736(10)61459-6Cite


毎年2億例のウィルス性市中肺炎が生じ、1億人は子供、1億人は大人である。
分子生物学的診断検査により肺炎におけるウィルスの役割の理解が増加し、ウィルス性肺炎の頻度が過小推定されていたことが分かった。
子供では、RSウィルス、ライノウィルス、ヒトメタニューモウィルス、ヒトボカウィルス、パラインフルエンザ・ウィルスが先進国・途上国ともかなり頻度多い原因ウィルスとして同定された。二重ウィルス感染はざらで、3分の1が子供ではウィルス・細菌共感染。
成人では、ウィルスは市中肺炎の3分の一の推定病原因子であり、特に、インフルエンザウィルス、ライノウィルス、コロナウィルスなど。細菌は引き続き成人においては肺炎の主な役割である。
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市中でのウィルス流行の存在、患者の年齢、疾患発症のスピード、症状、バイオマーカー、レントゲン変化、治療反応性が細菌性肺炎とウィルス性肺炎の鑑別に役立つ。しかし、肺炎の原因を明確に区別することの出来る臨床的アルゴリズムは存在しない。

・年齢:ウィルス性は5歳未満が多い、細菌性は成人が多い
・疫学的状況:ウィルス性はウィルス学的な流行
・病歴:ウィルス性は発症ゆっくり、細菌性は迅速発症
・臨床的特性:ウィルス性は鼻炎・喘鳴、細菌性は高熱、過呼吸
・バイオマーカー:ウィルス性は白血球数少なく(< 10×109cells/L)、CRP少なく(<20 mg/L)、プロカルシトニン濃度低値(<0.1 μg/L)、細菌性は白血球数多く(< >15×109cells/L)、CRP多く(>60 mg/L)、プロカルシトニン濃度多い(> 0.5 μg/L)
・胸部レントゲン:ウィルス性は間質性浸潤・両側、細菌性は葉性肺胞性陰影
・抗生剤治療反応:ウィルス性は緩徐・無反応、細菌性は迅速


明らかなウィルス性の市中肺炎は抗生剤治療が必要かどうかの明らかなコンセンサスにも至ってない。
インフルエンザウィルスによる肺炎へのニューラミニデース阻害剤は別にして、ウィルス性市中肺炎の治療に対する特異的抗ウィルス薬使用の役割は明らかでない。インフルエンザワクチンが、利用可能な、唯一の特異的予防法である。さらなる研究で、市中肺炎の原因・病因のよりよい理解が必要である。
さらに肺炎ケースの地域的相違が考慮されるべきで、発展途上国のデータが特に必要。

インフルエンザをのぞく治療・予防
・RSウィルス: 治療 Ribavirin(inhalation:ih, intravenous:iv)、 予防:Palivizumab(intramuscular:im)
・アデノウィルス: 治療 Cidofovir(iv)、予防 type 4、7ワクチン
・ライノウィルス: 治療 Pleconaril、 予防 Alfaインターフェロン(intranasal)
・エンテロウィルス: 治療 Pleconaril
・ヒトメタニューモウィルス: 治療 Ribavirin(iv)
・ハンタウィルス: 治療 Ribavirin(iv)
・水痘・帯状疱疹ウィルス: 治療 Aciclovir(iv)、 予防:ワクチン

by internalmedicine | 2011-04-08 14:38 | 感染症  

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