医者が患者になったときの選択は、医者という立場で勧めた治療法と違う方法を選択する・・・

医者というのは、自分が治療選択する場合になると、患者に選択させてたことと違う選択方法を選ぶことがある。仮想的2つのシナリオを通して、どのように変わるかを提示した報告。

現在は、パターナリズムの否定、すなわち、何をすべきかを医師たちが語るべきではないと患者たちは思っている。リスクとベネフィットだけを客観的に述べてくれたらよいと思うのが今のスタンダードな考え方とされる。
意志決定者と、助言者という、異なる立場になったときに、何が生じるかに関してその報告は少なかった。
医師たちはその経済的関心や専門性、スタイルなどによってバイアスが生じ、結果、悪い助言を当てているのではないかということに疑念を持たれる。たとえば医師自身が手術したいための手術、レントゲン照射したいためのレントゲン治療などである。
参照:http://www.businessweek.com/lifestyle/content/healthday/651778.html


Physicians Recommend Different Treatments for Patients Than They Would Choose for Themselves
Arch Intern Med. 2011;171(7):630-634. doi:10.1001/archinternmed.2011.91

大腸癌シナリオ:
242名の医師に、大腸癌と診断され、2つの手術の一つを選択させるもので、
両方とも80%の治癒率
1)死亡率が高く、一つは副作用が少ないもの
2)低死亡率だが、患者は大腸切除必要で、慢性の下痢症、間欠的腸閉塞や創部感染に悩まされる可能性があるもの

医師は37.8%が高死亡率・低副作用率シナリオを選択肢、患者への推奨は24.5%。



トリインフルエンザシナリオ:
フィクション上の新しいトリインフルエンザで、10%死亡率で、30%の平均1週間入院
1)インフルエンザそのものが10%死亡率、30%が1週間入院となる
2)治療オプションとして、インフルエンザ副事象を半減するが、死亡率1%、4%の恒久的麻痺の副作用

700名の医師のうち、62.9%が治療よりインフルエンザに耐えることを選択する。患者に対しては半数の48.5%が治療を選択させる方を推奨する。



医師たちが自分が患者の立場のとき選択したのは、副作用が少ない、低侵襲の方を、死亡率が多少高くても選ぶ・・・という共通性があるのか?

この結果をみて、医者を色眼鏡でみる人たちは、医者ってろくでもないなぁ・・・と感想を述べるかもしれないが、実は、医者は患者を死なさないことをやはり一番に考える傾向にあるため、自己選択と、患者への選択が異なるのだと思う

もちろん、不心得者や視野の狭い専門馬鹿医者のいることは事実だが・・・

非侵襲的方法を選ぶという患者の傾向に、医師も共感する必要があることは確かなようだ。






話はずれるが、日本の場合、治療選択を行わず、直接、特定の治療法の得意な病院があると聞きつければそこに行って、患者自らが選択肢を狭くしている状況を垣間見ることがある。セカンドオピニオンなどは客観的な数字よりそこの先生が感じよかったから信用する・・・などといった治療法選択より医者との相性選択に終わっている気がする。

臨床の現場にいると、日本の医療に、上記ごときdecision makingが存在するかはなはだ疑問。

by internalmedicine | 2011-04-13 10:09 | 医療一般  

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