嗅覚障害:自己補正システム ・・・ 病識不足の原因であり、治療対象の問題でもある
2011年 04月 19日
13%程度に現状に対しフラストレーションがみられ、治療必要性がある人たちがいる。この人たちをのぞいて、嗅覚障害全員が介入必要ではない。
ただ、MCIのような認知機能障害やパーキンソン病などの神経疾患早期認識のためには嗅覚検査というのは重要だろう。本人たちが自覚してないこともあり、嗅覚障害検査に関して、それらの意義のもと、積極的に検査が普及する必要があろう。
Patient Adjustment to Reduced Olfactory Function
Ilona Croy, MD; Basile N. Landis, MD; Thomas Meusel, MD; Han-Seok Seo, MD; Franziska Krone; Thomas Hummel, MD
Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2011;137(4):377-382. doi:10.1001/archoto.2011.32
低嗅覚・無嗅覚患者は正常嗅覚対照に比べ嗅覚は有意に低下している(P<0.001)訳だが、無自覚で、何らかの機転が生じているようだと筆者ら。
嗅覚障害はコモンで、米国では約13%から18%が低嗅覚、4-6%無嗅覚という頻度。主な原因は、ウィルス感染、頭部外傷、副鼻腔疾患、神経変性疾患であるが、多くは、加齢に伴うもの。
このような頻度にかかわらず、多くは治療を要求しない。
これは、多くの患者が障害を自覚せず、重要性の認識がないからである。
Olfaction Questionnaireによる個人の嗅覚に関する重要性評価を行い、"Sniffin' Sticks" testで嗅覚評価。3つのサブスケール、すなわち、嗅覚によりトリガーされた感情・記憶(association)、日々の嗅覚に依存性(application)、いかに日々の意思決定に関わるか(consequence)を含む検討。
嗅覚障害による日々のフラストレーション測定値も含む検討。
正常嗅覚者に比べ、嗅覚重要性スコアが嗅覚障害者では低下していた。しかし、"dose-effect"がややみられ、低嗅覚より無嗅覚で、嗅覚認識スコアが高かった (P<0.001)。筆者らによると補正後も維持されていた。
低嗅覚・無嗅覚症患者は嗅覚トリガー感情・記憶の記載が少なく、嗅覚の利用も少なく、意思決定の上の嗅覚利用も少なくなる。しかし、この関係での低嗅覚・無嗅覚での有意差がみられる (P<0.001)。
1年以上状況が続くと、その嗅覚認識上での改善傾向があり、こういう自然補正が行われているのだろう。
13%にフラストレーション悪化が診られ、この人たちは、有意にうつスケール高値 (P=0.005)。
この人たちには、心理的療法を含む治療推奨すべきと述べている。
嗅覚というのは実に特異的、不思議な感覚系である。
嗅覚・フェロモン・性腺ホルモンに関連するprecursor発見:嗅覚と性的関係示唆 2010/07/22 http://intmed.exblog.jp/11014153
グルコン酸亜鉛を含有する OTC 経鼻投与による嗅覚消失・・・因果関係を示す報告 2010/07/20
パーキンソン病も、嗅覚障害にて早期発見? 2008/03/24
高齢者の臭い同定能力とMCI 2007/07/04
無理矢理病名をねつ造的に作り、病名を作ったら、治療法をねじ込むという考え方・・・上記、嗅覚障害治療に関する考え方をみると、それが間違いだと気づかされる。
by internalmedicine | 2011-04-19 10:07 | 中枢神経