てんかんと運転免許について思う・・・

読売新聞の記事(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110420-OYT1T00017.htm?from=top )"「てんかんの持病があるが、この日は発作を抑える薬を飲み忘れていた」と供述”が正しければ、三重県の踏切事故の”てんかん発作で1カ月前に薬増量”した歯科医に続き、てんかん例がらみの交通事故が続いたこととなる。三重県の事例は、”持病申告せず免許更新”した疑いが報道される。現在捜査段階の事例では、てんかん発作コントロールされてない旨の報道がある。だとしたら、法律や基準に従ってない非合法的例の問題であろう。

これら重大事件が、今後、てんかんと運転免許制度のありかたに影響を与えると思うが、大部分のてんかん症例者にとって、有益な社会資源活用の機会を奪う方向には行ってほしくない。

2002年の道交法改定は、睡眠時無呼吸症候群や糖尿病、失神などを生じる不整脈疾患など、私などにも日常診療上大きな影響を及ぼしている。しかし、てんかん事例は、診断書を要求される状況の場合、診断として正確な病型分類が必要、故に、専門医による診断書が必須。

で、てんかん関連事例と運転免許証の現状は、どうなってるのだろうか?

2002年6月の道交法改定以降の状況に関しての報告の一例だが、合法下で免許取得のうちの半数は歳適性検査不要あるいは3年後再検査と行った問題の無い例が多い。だが、1割程度に不許可・保留・停止が有り、その根拠が自己申告がほとんどで、実際に主治医診断書・検査医判断は限られている。すなわち、医療の関与が制限されているのである。
2003年、2005年と比較
合法的に免許を取得した人は2544人で、48%は再適性検査不要であり、要再検査は3年後がもっとも多かった。
一方、免許不許可は169人、保留・停止は60人であった。95%が自己申告であり、多くは主治医診断書で処理され、臨時適性検査医によるものは2.5%であった。

てんかん学会員は43名が回答し、半数以上がてんかんをもつ人の運転免許に関する意識がポジティブに変わったとした。すべてのてんかんで一律に同じ基準で判定することの問題、殊に希発発作、最近発症のてんかん、誘因のある場合等では、別個に判定すべきであるという意見があった。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007046208


これを見ると、合法的な手続きを行っているケースで問題となるのは1割程度、9割の方々は、運転免許を問題なく習得・維持されている。 多くのてんかん関連の疾病を有する人たちが、2002年の法改定により社会資源を利用できるようになった社会的価値は大きいと思う。


参考:
道路交通法改正にともなう運転適性の判定について
日本てんかん学会法的問題検討委員会 2002
http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/info003.pdf



早々に、国家公安委員長がコメントを出しているが・・・
6児童死亡「居眠りなら会社も責任」 国家公安委員長 2011年4月19日11時38分

 栃木県で児童6人が死亡した事故について、中野寛成国家公安委員長は19日の閣議後会見で「(逮捕された運転手が)居眠りだったということであるならば、雇っている会社の監督責任も当然でてくる。日ごろの過労の積み重ねがあったのか、前日の本人の生活がどうなったのか、背景を含めてしっかりと取り調べをしないといけない」と述べた。
http://www.asahi.com/national/update/0419/TKY201104190132.html

もし、新聞報道の通りだとしたら、法の執行上の問題、すなわち、国家公安委員長や国土交通省などの責任問題でしょ! 


追記.

免許取得時、更新時の厳格な対応が必要と、無告知時罰則強化必要だろう。

「同じ問題繰り返されている」てんかん発作の事故で息子失った男性無念/横浜 カナロコ 4月23日(土)8時45分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110423-00000017-kana-l14
2008年3月、横浜市鶴見区で、てんかんの発作で意識を失った男が運転するトラックにはねられ、長男の市立中学2年伊藤拓也君=当時(14)=を失った父親の真さん(47)は、無念さをにじませた。

by internalmedicine | 2011-04-20 10:05 | 医療と司法

 

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