10年イベント発生率から5年、3年、2年などを推定する方法

10年イベント発生率から5年、3年、2年などを推定する方法なんて、成書にもWebにもかかれておりませんが、臨床上最近必要とされる機会が多くなっております。
単に比例計算をしているとことが多いようですが、それでよいのか、考察してみました。

人間は必ず死ぬ。そしてあらゆるリスクによって死ぬ。そのリスクをハザードとして計算してみますとイベントが一定であっても上限があることがわかります。リスクが少なければ直線上に比例的に大きくなるだけです。
これを図示してみると以下のごとくになります。
図示

10年心血管イベントは
ここで推定できますが、時には5年、2年ということを問題にする場合があります。

それは
イベント発生予測率(y年)=1-(1-A年後イベント発生予測率)^(y/A)
で計算できます。

10年イベント予測5%のときは、5年2.53%、1年1.01%です。
10年イベント予測50%のときは、5年29.3%、2年12.9%程度です。
これほどのリスクの場合はかぎられておりますので、たいていの場合、比例計算でもあまり、違いはないようです。


NNTという指標がありますが、これは、ある治療介入をしたときに、一定期間後に何人の介入につき何人がイベントを回避できるかという治療のありがたさの指標です。これも同様に計算できます。こまったことにNNTは年数がdimensionとしてはいってないのが以前からきになってしかたがなかったのですが本来はNNT(y):yは観察年数とすべきだと私は思っております。
たとえばほとんどの研究が5年ということでスタチン治療でメジャーな心血管イベントNNT(5)=28である場合、これを2年に修正すると69.2となりますし、10年だと14.3となります。雑にいえばNNTの場合は単なる比例計算でよいようです。ようするに5年を2年で換算するには2/5をかければあまり違いがないとなります。この方面の計算もたいてい正比例計算でOKと・・・

以前小泉がいかに人殺しかを計算したときは、このほぼ正比例関係を前提に計算しましたが、まあ、間違いではなかったと考えております。


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<計算の説明>
10年後の生存率 life_expancy(10)=1-exp((stable_hazard+other_hazard)×10)
5年後の生存率 life_expancy(5)=1-exp(stable_harard+other_hazard)×5)

同一対象者で、ハザードが暴露期間中同じと考え、kは定数と考えてよいので
定数:k=stable_harard+other_hazard

life_expancy(10)=1-exp(10k)
k=log(1-life_expancy(10))/10
life_expancy(5)=1-exp(5k)
k=log(1-life_expancy(5)/5
llog(1-life_expancy(10)=2log(1-life_expancy(5))
1-life_expancy(5)=(1-life_expancy(10))^0.5
life_expancy(5)=sqrt(1-(1-life_expancy(10)))=sqrt(life_expancy(10))

対象年数を一般化すれば life_expancy(y)=(1-life_expancy(10))^(y/10)

さらに一般化すれば
イベント発生予測率(y年)=1-(1-A年後イベント発生予測率)^(y/A)

by internalmedicine | 2004-04-03 12:19 | 医学  

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