エコノミークラス症候群という病名の使い方

どうも、エコノミークラス症候群という病名の使い方、気になります。

“厚生労働省健康局疾病対策課より新潟県難病対策担当課宛に事務連絡”という公的文書にも“深部静脈血栓症/肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)”となっているんですねぇ

"エコノミークラス症候群”という命名には否定的な論文が有るということをお偉い学会の先生や厚労省のお役人はしらないのでしょうか?
開業医よりまさか勉強してないなんてこと内ですよね・・・・

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深部静脈血栓というひと、肺塞栓・血栓をいうひとまちまち
http://www.aeromedical.or.jp/pilot/2001-3.pdf
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と、ありますが、

外国の文献などは、やはりDVT(深部静脈血栓症)のことを指すことが普通で、その後の肺塞栓の合併症までは直接さしてないようです。肺塞栓はかならず深部静脈血栓が存在するという考えからでしょうか?

飛行機搭乗中の低酸素・低圧状況下という環境も加味された言葉であり、車上の窮屈な状態でのDVTを指す言葉としてはあまりふさわしくないと私は思うのですが・・・マスコミはじゃんじゃん使ってますねぇ。


救急医学会のお偉いさんがつかってたからお墨付きを与えてしまったようですね。



<原著>
Cruikshank JM, Gorlin J, Jennett B. Air travel and thrombotic episodes:
the economy class syndrome. Lancet 1988; 2: 497-498.

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Flight-related Deep Vein Thrombosis (DVT) - "Economy Class Syndrome"
http://health.msfc.nasa.gov/tips/flight-dvt.html

venous stasis and thrombosis
http://www.cmaj.ca/cgi/content/full/165/4/467

Developing DVT after long plane rides
http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=3010041
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いわゆる“economy class syndrome”のシステムレビューが少ないようですが・・・
“8時間以上の長期旅行で、かつ、なんらかのリスクを有しているときに問題が
ある。”
The association between air travel and deep vein thrombosis: Systematic review & meta-analysis
http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=434500
というのがあります。

結論は、DVTリスクのある人たちは長時間旅行時は注意してくださいというもので、エコノミークラスに限定されてものではなさそうです。このリスクを有している人たちに注意を与えることを優先にすべきと・・・・

啓発するんだったら、下肢静脈瘤のある人たち、エストロゲン製剤服用者などにとくに注意を振り向けさせるべきと思います。


オウム事件や震災後、“PTSD”という用語の乱用が、その後の混乱のもととなり、医家自体がその用語を曖昧なまま使ったため、混乱を起こした事例になると思います。
http://www.asahi.com/science/update/0519/002.html


言葉はやはり大事です。


“エコノミークラス症候群”という名前が医学用語でなければそれでもよしと思います。朝日新聞(西部版には少なくとも掲載されていた)などのメディアは、さらに、“エコノミー症候群”なんてのも作り上げてますよね。(参照:URL
わけわかんない

 ↑

いいかげんな病名をつかうな!
こういうメディアは、病気を解説する資格なしですよねぇ











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by internalmedicine | 2004-11-02 17:49 | 医学  

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