グレーブス眼症へのセレニウム耐容上限超過量:眼所見・疾患特異的QOL改善 副作用認めず 

※下記投与量はセレニウム耐容上限と定められている量を超過するため、安易に、この論文報告に飛びつかないように! 

この報告自体、しっかり、吟味される必要がある。

そのことを踏まえた上で


グレーブス(病)眼症における、抗酸化物質:セレニウムの使用は副作用も認めず、プラセボや現行対症薬に比較して効果が認められるという画期的な話。

Selenium and the Course of Mild Graves' Orbitopathy
Claudio Marcocci et. al.
the European Group on Graves' Orbitopathy
N Engl J Med 2011; 364:1920-1931May 19, 2011

ランダム化二重盲検プラセボ対照化トライアル
・selenium (an antioxidant agent): 100 μg×2/日
・pentoxifylline (an antiinflammatory agent): 600 mg×2/日
・プラセボ
159名のmild Graves' orbitopathy割り付け

6ヶ月いずれも経口投与、終了後6ヶ月間フォロー

プライマリアウトカムは6ヶ月後、包括的眼評価とGraves' orbitopathy–specific quality-of-life questionnaire。
セカンダリアウトカムは、 Clinical Activity Scoreとdiplopia score


6ヶ月ご評価にて、セレニウム治療群は、ペントキシフィリンではみられない、QOL改善 (P<0.001) 、眼症所見減少(P=0.01) 、Graves眼症発症緩徐化 (P=0.01)を示した。

全群で、Clinical Activity Scoreは減少したが、変化はセレニウム治療群で有意に大きい。
12ヶ月時点での性能評価では6ヶ月時点で観られるより明らかとなった。

状況悪化により、プラセボ割り付け2名、ペントキシフィリン割り付け1名で免疫抑制剤使用必要となった。

セレニウム投与ではっきりした副作用無く、ペントキシフィリンは胃腸障害多し


抗酸化薬剤って、ビタミンを含め、ランダム化トライアルとなると、有効性が曖昧なのが多い

抗酸化薬剤で、これほど効果がはっきりした病態・疾患というのは珍しいのでは・・・脂肪肝治療:ミトキノン(ユビキノン MitoQ)による抗酸化作用効果の可能性  (2011/05/03 )程度か? それ以外では、むしろ、抽出性合成ビタミンでの有害性報告が目立つ。


厚労省 ”セレンやクロムを含むサプリメントの過剰摂取にご注意”では、

日本人は通常の食事からセレンを十分に摂取しており、その平均摂取量は約1日当たり100マイクログラムといわれています。この平均摂取量を調査結果に加算すると、耐容上限量を超えてしまう製品がありました
とあり、このことに注意が必要だろう。

by internalmedicine | 2011-05-19 08:31 | ビタミン  

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