がん自己申告4割は誤り
2011年 05月 30日
「がんにかかった」自己申告の4割は誤り-国立がん研究センター
医療介護CBニュース2011年5月27日(金)18:30
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/medical/cabrain-34374.html
国立がん研究センターはこのほど、疫学調査のアンケートで「がんにかかった」と回答した人のうち、4割が実際にはがんにかかっておらず、誤った申告をしていたとの研究結果をまとめた。
岩手、秋田、茨城、新潟、長野、大阪、高知、長崎、沖縄各府県の10保健所地域の住民約9万3000人を対象に、2000年から04年にかけて行ったアンケートの回答とがん患者の登録症例を照合した。アンケートで「過去10年間に何らかのがんにかかった」と答えたのが2943人、実際にがんにかかり、登録されていたのは3340人だった。
照合結果によると、「がんにかかった」と回答した人のうち、本当にがんにかかっていたのは60%。残る40%は、誤って申告していた。一方、がんにかかった人のうち、アンケートにも「かかった」と回答していたのは53%で、47%は申告していなかった。こうした自己申告とのずれについては、がんを告知されているかどうかに加え、がんであることを言いたくない、または自分はがんではないかと疑うといった心理が影響していると考えられるという。
一方、米国やスウェーデンの調査では、がんになった人の約8割がアンケートにも正しく回答しているといい、「社会や文化、宗教などの背景の違いが関係しているのではないか」と分析している。
同センターの研究班は、「インフォームド・コンセントが普及してきた最近においても、がん罹患を自己申告から正確に把握するのは難しいことが判明した」と指摘。さらに、「自己申告のデータによる研究では、信頼性の高い結果を得ることができない」とし、がんをはじめとする生活習慣病の実態把握や予防法解明のためには、法的に整備された疾病登録が必要だとしている。
詳しくは、多目的コホート研究のホームページで。
現在までの成果 がんの自己申告の正確さについて
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2716.html
がんの自己申告の正確さは高くない
これらの結果を照合した結果、何らかのがんにかかった人全体のうち、アンケート調査でも「がん」にかかったと自己申告していた人は、53%でした。また、「がん」にかかったと自己申告していた人のうち、本当にがんにかかっていた人は60%でした。これを言い換えれば、47%の人はがんにかかってもそれを知らないか言いたくないなど、何らかの理由で「がん」にかかったことを自己申告しない、また、40%の人はがんではなかったのに「がん」にかかったと誤って申告したことになります。
がんについては、予後の良悪に伴う告知の状況などの違いにより、かかったかどうかを自己申告する割合が異なってきます。本調査では、何らかのがんにかかった人全体のうち、アンケート調査でも「がん」にかかったと自己申告していた人の割合及び「がん」にかかったと自己申告していた人のうち、本当にがんにかかっていた人の割合はそれぞれ、胃がんで62%と52%、大腸がんで38%と47%、肺がんで57%と46%、肝がんで42%と31%、乳がんで82%と58%、子宮がんで59%と22%でした。この結果から、部位によって異なるにしても、自己申告によってがんにかかったことを正確に把握するのは、比較的最近においても難しいことが判明しました。
がんの自己申告の正確さは、欧米の同様の調査からも報告されていますが、米国やスウェーデンではがんになった人の8割程度が自己申告によってがんになったと回答しています。その正確さの日本との差は、アジアにある日本の社会や文化、宗教などの背景が欧米と異なることにより起こってきていると考えられます。
この研究結果からわかること
多目的コホート研究では、がんや脳卒中、心筋梗塞について、保健所を通して、病院や主治医の先生方のご協力を得ながら可能な限り正確な情報を収集するように努めています。そして、5年後や10年後に実施したアンケートの結果だけで対象者の方が病気に罹ったかどうかを判断するという方法はとっていません。もし仮に、アンケート調査による自己申告のデータを採用して研究を行ったならば、がんにかかった人の約5割は見落とされ、しかも「がん」にかかったと申告した人のうち4割は、実際にはかかっていなかったという状況で結果を分析していたことになります。これでは、原因とがんなどの疾病との関連について、信頼性の高い結果を得ることができません。
がんなど生活習慣病の予防法の解明や実態の把握のためには、法的に整備された疾病登録が望まれます。また、研究を行う際には、病気にかかったかどうかの情報の収集は自己申告に頼ることなく、綿密に計画された疾病登録を行うことが必要です。そうしないと、正確な研究成果を得るのは困難です。
by internalmedicine | 2011-05-30 10:06 | がん