同じコホートで別の結論に! :左心高R波のリスク要素としての意味
2011年 06月 04日
こういう疫学調査の報告の信頼性さえ疑われるのだが・・・しかも国が関与している研究で、NIPPON DATA (National Integrated Project for Prospective Observation of Non-communicable Disease And its Trends in the Aged)は、厚生労働省の循環器疾患基礎調査。
結論は、ST-T異常は、左心高R波の有無にかかわらず、心血管疾患死亡率の独立した予後因子(”In conclusion, ST-T abnormalities with or without left high R waves on electrocardiogram recorded at rest constitute an independent predictor of CVD mortality in Japanese men and women.”)なのだが・・・
Prognostic Value of ST-T Abnormalities and Left High R Waves With Cardiovascular Mortality in Japanese (24-Year Follow-Up of NIPPON DATA80)
American Journal of Cardiology
Volume 107, Issue 12 , Pages 1718-1724, 15 June 2011
これと同じコホートのはずだが、逆の結論!
↓
Electrocardiogram Screening for Left High R-Wave Predicts Cardiovascular Death in a Japanese Community-Based Population: NIPPON DATA90
Hypertens Res 200605 巻:29 号:5 頁:353-360
抄録:心電図で診断された左心室肥大の,一般日本人母集団における心血管疾患予測能についてはあまり知られていない。本研究では,左心室肥大の心電図所見の本質的要素である高振幅R波に焦点を置き,心血管死予測における高振幅R波の有用性評価を試みた。NIPPON DATA90の資料を用いて無作為に抽出した全国300地域の30歳以上の6688名を被験者として10年間追跡した。水銀マノメーターを用いて血圧を測定し,収縮期血圧(SBP)≧140mmHg,および/または拡張期血圧(DBP)≧90を高血圧と定義した。また,標準12誘導心電図を測定し,V5またはV6誘導のR波>2.6mV,またはI,II,III,あるいはaVF誘導のR波>2.0mV,またはaVL誘導のR波>1.2mV,および/またはI誘導のR波>1.5mVかつ≦2.0mV,またはV1誘導のS波とV5あるいはV6誘導のR波の和>3.5mVの場合を左心高R波と定義した。左心高R波は,全被験者の9.4%,高血圧者2413例の14.6%,正常血圧者4275例の4.1%に観測された。追跡期間中の521死亡例のうち128例が心血管疾患による死亡であった。Coxの比例ハザードモデルを用いて心血管死に対する左心高R波のハザード比を計算した。全被験者,高血圧者,正常血圧者の心血管死に対するハザード比は,それぞれ1.88,1.97,および1.66であった。全被験者,高血圧者,正常血圧者の心血管死に対する左心高R波の母集団帰属可能な危険率は,上記ハザード比および罹患率から計算して,それぞれ7.6%,12.4%,および4.1%であった。収縮期血圧などの他の危険因子を補正した後の左心高R波は心血管死の危険増大を意味した。結論として,左心高R波は収縮期血圧に関係なく,日本人地域住民における心血管死の予測マーカーであった。
原子力関係であらわになった、官製研究や権威者たちのお粗末な現状は別の分野でも同様で、医学関係では、”パワリハ”や”メタボ”騒動もつきつめれば官製研究者たちの言動が要因の一つであったと思う。
糖尿病一次予防に”悪とす”一剤とした国主導研究(2型糖尿病発症予防のための介入試験(J-DOIT1))はいつのまにか”悪とす or メトホルミン”とすり替わっている。某企業と官製研究者・国の相互癒着は・・・医学だけでなく日本の化学研究そのものを貶めており、国力低下をもたらしている。
by internalmedicine | 2011-06-04 08:47 | 動脈硬化/循環器