記憶障害主体のMCIへの食事の影響: 高飽和脂肪酸・低炭水化物食 v 低飽和脂肪酸・高炭水化物食
2011年 06月 14日
"Diet intervention and cerebrospinal fluid biomarkers in amnestic mild cognitive impairment"
Bayer-Carter J, et al
Arch Neurol 2011; 68: 743-752.
【目的】 健常者・軽度記憶障害のなるMCI(aMCI)を対象にした、4週間の高・飽和脂肪酸/高glycemic index食(HIGH)と、低・飽和脂肪酸/低glycemic index(LOW)食のインスリン、脂質代謝、アルツハイマーの脳脊髄液(CSF)濃度マーカー、認知機能比較
【デザイン】 Randomized controlled trial.
【セッティング】 Veterans Affairs Medical Center clinical research unit.
【被験者】 49名の成人(20名献上:平均年齢[SD] 69.3 [7.4]で)と aMCI 29名(67.6[6.8]歳)
【介入】 それぞれ4週間
・HIGH diet (脂肪, 45% [飽和脂肪酸, > 25%]; 炭水化物, 35%-40% [glycemic index, > 70]; 蛋白, 15%-20%)
・LOW diet (脂肪, 25%; [飽和脂肪酸, < 7%]; 炭水化物, 55%-60% [glycemic index, < 55]; 蛋白, 15%-20%)
認知機能試験、経口糖負荷試験、脊椎穿刺をベースラインと4週後
【主要アウトカム測定】 β-amyloid (Aβ42 and Aβ40)、 tau protein、 insulin、 F2-isoprostanes、 apolipoprotein E、 plasma lipids と insulinと認知機能評価
【結果】 aMCI 群では、LOW 食ではCSF Aβ42濃度増加、アルツハイマー病にみられる典型的なパターンのCSFAβ42低下の病的パターンと逆。
LOW食は、健康成人ではCSF Aβ42減少という逆効果を示し、HIGH食ではCSF Aβ42増加を示す。
両被験者群とも、CSFアポリポ蛋白E濃度はLOW食により増加し、HIGH食で減少する。
aMCI群では、CSFインスリン濃度はLOW食で増加するが、HIGH食により健康成人群ではCSFインスリン減少する。
血中脂質、インスリン、CSF F2-isoprostane濃度に関し、HIGH食では増加し、LOW食では減少させる。
遅延視覚記憶は両群ともLOW食4週後改善した。
表にまとめると・・・

これでストーリーを作らないといけないのだろうけど・・・よくわからんが、HIGH食やLOW食といった食事内容の変化により、アルツハイマー病と関連する脳内の物質の変化が生じることは確かで、病態でも変化に差が生じているという話。
aMCIにおけるアミロイドβ42の影響と記憶パフォーマンス結果を見るとLOW食のほうをさしあたり勧めるべきだろう。すなわち、低脂肪食・高炭水化物食、ただし、低glycemic index(< 55)食・・・
NHKスペシャル(H23.6・13)で、”サーチュイン遺伝子”に関連する放送があったらしい。どの程度の放送だったかわからないが・・・夢想的なものを現実的にと、ミスリードしてないことを願うばかりだ・・・最近のNHKなら大いにあり得るから怖い。
” SirT1の発現量と活性はカロリー制限により増加し、正常血糖を保ち、効率的なエネルギー利用を促進する”。そして、"Cell"誌にsirtuinとβアミロイドタンパク合成の報告がなされている。
SIRT1 Suppresses β-Amyloid Production by Activating the α-Secretase Gene ADAM10
Cell, Volume 142, Issue 2, 320-332, 23 July 2010

MITの研究で、sirtuinがアルツハイマー病を予防・抑制する可能性があり、グレープの皮や赤ワインにある物質であるresveratrolにより活性化し、これが脳のβアミロイド形成・脳のプラーク形成を防ぐのではないかとされ、また、長寿作用をもたらすのではないかとされた。上記雑誌によると、SIRT1 sirtuinの過剰マウスは脳のプラークが少ない。そして、記憶能力が優れている。SIRT1のないマウスはプラーク形成され、記憶パフォーマンスに劣るという話。
by internalmedicine | 2011-06-14 10:37 | 精神・認知