入院患者・外来患者の医療過誤賠償

入院患者・外来患者の医療過誤賠償

National Practitioner Data Bankのデータ解析にて、Bishopらは、医療訴訟賠償(入院・外来)、訴訟特性、要素を、賠償額と相関があったと報告。

2009年訴訟数は、入院・外来とも同様で、2/3は死亡・重大傷害であった。



Paid Malpractice Claims for Adverse Events in Inpatient and Outpatient Settings
JAMA. 2011;305(23):2427-2431. doi: 10.1001/jama.2011.813

2009年、10739の医師側医療過誤支払いがあり、この賠償のうち、4910(47.6%)が入院、外来が4448(43.1%)、966(9.4%)が両方に関連するもの

外来患者の賠償比率は軽度増加しているが、統計学的に有意で、41.7%から43.1%の増加(P<.001)

外来において、最大理由は診断に関わるもの(45.9%; 95% CI, 44.4%-47.4%)
入院においては、手術に関してが最大(34.1%; 95%CI 32.8%-35.4%)

両方とも、重篤傷害・死亡が2つの主なアウトカムである。

イベントごとの賠償額は入院の方が外来より大きい ($362 965; 95% CI, $348 192-$377 738 vs $290 111; 95% CI, $278 289-$301 934; P < .001)


”医療過誤リスクが多い分野は、産科・婦人科、麻酔科、様々な手術専門科で、これらの科目では破滅的状況になりやすく、法的ケースになり安い歴史をもち、メディア報道されやすく、さらに支払額も巨額になりやすい、一般臨床外来医やインターベンションのない外来では、高リスクリストとはなりにくい。”(AMA.2011;305(23):2464-2465

ちょっと日本とはイメージ・様相が違うようだが、医療過誤リスクの多い分野は固定化しているようだ。


米国政府として、いままでは医療安全問題は入院への取り組みがほとんどで、国家的な予算を5年において2倍投資している。しかし、外来でもハイテク診断や侵襲的治療が外来で行われ、賠償額も増加してきている。そのため、上記報告のような、外来と入院の特性に注目して検討がなされた次第。

米国政府への働きかけとして、入院ばかりでなく、外来においても、患者への安全性がより注意が払われるべきという、医療過誤賠償額という経済的インパクトに基づいて論旨したものと受け取る。


日本の電子カルテって、安全性に寄与する者であるべきなのに、なんだか、効率や経済的側面ばかり。これは、安全性へのインセンティブが働かない医療保険制度だからなのだろう。
たとえば、重大疾患を見逃さないための診断補助システムや、有害性薬剤同定・警告システムを電子カルテに組み込み、安価に各医療機関に提供できるシステムとなれば安全性がある程度担保されるだろう。
思いつくのは、”急性喉頭蓋炎”、”心筋炎”、”くも膜下出血”、”髄膜炎”、”大動脈解離”、”頸動脈解離”、”急性冠症候群”、”致死的不整脈”、”緊張性気胸”、”心タンポナーデ”、”破傷風”、”乳幼児の無熱性敗血症”、”MCLS”・・・など症状所見がマスクされやすい疾患への臨床診断補助・過誤予防(患者家族へのアラーム文書など)システムなど

そういう観点って、厚労省にはないもの・・・金出さず、口だけ出す”あーせーこーせい”厚労省

by internalmedicine | 2011-06-15 08:48 | 医療と司法  

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