ランダム化対照試験 : 終末期患者への”dignity therapy”の効果

終末期の患者にとって、”dignity therapy”と呼ばれる新しい心理療法

患者のdistress(苦痛)を緩和に関するエビデンスはないが、
終末期のexperienceを改善することに関して、エビデンスが認められたというもの


”dignity”って、”威厳、 尊厳、 品位、気品”という意味。

医学書院(第2793号 2008年8月11日 第13回日本緩和医療学会開催 「広げる・深める・つなげる――技と心」をテーマに )にカナダ・マニトバ大教授のHarvey Max Chochinov氏によって,氏自身が開発した心理療法である“Dignity Therapy”(あなたの大切なものを大切な人に伝えるプログラム) の記載がある。
参照:http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02793_01


Chochinov H, et al "Effect of dignity therapy on distress and end-of-life experience in terminally ill patients: a randomized controlled trial" Lancet Oncol 2011; DOI: 10.1016/S1470-2045(11)70153-X.


95%ががん患者である、441名の余命推定六ヶ月以下の患者を対象に、三つのグループに分けた。研究登録distress(苦痛)レベルは問わなかった。distress levelは介入により有意に変わらず。
サンプル内のdistress率がサンプルで低かったため、おそらく、distressの有意差が出なかったのではないかといういいわけをChochinovらは記載している。

筆者らしい、そんないいわけはともかく、dignity therapyを受けた患者は、患者自身にも家族にも役だったという報告をしており、QOL改善、そして、dignity感の改善に役立ち、家族がいかに見守り評価してくれたかを理解する率が高かったとした (P≤0.002 for all)。
dignity therapyはclient-centered careより、スピリチュアルなwell-beingにおいて有意に良好で、自己報告悲哀・うつ感情改善に関して標準緩和ケアより有意に良好 (P≤0.009 for both)
標準緩和ケアに比べ、比率として、dignity therapyの満足度は高い (P<0.0001).

dignity therapyのような心理治療介入はタイムリーに患者、家族に” existential issues”(”生命の大切さ”と訳されているようだが、 ”その人が生存した意味”と私はとりたい)に着眼するチャンスを与えてくれると  Cheryl Nekolaichuk(Grey Nuns Community Hospital in Edmonton, Alberta)は述べている。



参考:Dignity Therapy: A Novel Psychotherapeutic Intervention for Patients Near the End of Life
Journal of Clinical Oncology, Vol 23, No 24 (August 20), 2005: pp. 5520-5525


終末期の患者さんたちだけでなく、そうでない自分たちも、自分の存在意義を考えさせられる治療法のようだ。



Harvey Max Chochinovの書籍:Handbook of Psychiatry in Palliative Medicine で、"dignity therapy"表題の書籍はない?

by internalmedicine | 2011-07-07 10:42 | 終末期ケア  

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