閉経は虚血性心疾患のリスク要素ではない ・・・ 比例リスクモデルで判明

今までの説明では、”閉経”をきっかけに女性は男性化し、動脈硬化がそこから促進する・・・というような俗説?定説?が常識のように跋扈していた。

元々、”動脈硬化というのはより若年から生じ、プラークの破裂・動脈血栓というのは最終幕である”というあらすじ(心血管疾患の年齢という要因 2008年 03月 04日)と、閉経リスクというのには矛盾がある。。


年齢に伴う心疾患死亡率の変化を用いて、女性が男性に比べて心臓疾患死亡率低下に寄与しているのが閉経前の性ホルモンの防御的効果によるものかどうか?

長軸的死亡率データを用い
1)死亡率と年齢が線形関係(絶対的死亡率)
2)対数的関係(比例的死亡率)
なのか仮定してモデルを作る

年齢、性別特異的な死亡率を1950-2000年センサスにて3つの生下コホート、1916-1925、1926-35、1936-1945に対しモデルフィットさせた

Ageing, menopause, and ischaemic heart disease mortality in England, Wales, and the United States: modelling study of national mortality data
BMJ 2011; 343:d5170 doi: 10.1136/bmj.d5170 (Published 6 September 2011) Cite this as: BMJ 2011; 343:d5170

イングランド・ウェールズデータで、絶対的増加より比例的増加はデータによりよくフィットしている(improvement in deviance statistics: women, 58 logarithmic units; men, 37)


45歳以降、男性死亡率は減衰(年齢・年 30.3%から5.2%へ減少、P=0.042)
しかし女性ではその減衰は有意でない (P=0.43。全体的に 年齢年あたり7.9%)

一方、女性乳がん死亡率は45歳以降有意に減少( 19.3% → 2.6% /年齢年, P<0.001)

USデータも同様。

虚血性心疾患死亡率の年齢関連”比例モデル”的変化は、修復的予備能の欠如であり、英国・ウェールズ・USUALLYからの長軸的の方が、”絶対的モデル”である年齢関連変化よりよくフィットすることが示唆された。

男性の心疾患が急激に若年層で促進するのは性差のほうでより説明可能で、閉経の影響より大きいと説明できる。


虚血性心疾患死亡率
絶対値スケール(上段)、対数スケール(下段)



乳がん死亡率


乳がんのようなホルモンと関連する疾患、すなわち、閉経と関連する疾患では、比例モデルと定常モデルで差が出てくるという次第・・・おもしろい対比だと思う。


わかりにくいが、各コホートの”閉経期”において、女性死亡率は、年齢に応じたsteady curveを呈し、予想の年8%ほどの指数的増加を示す。
対して男性の死亡率は45歳までに急激に増加し、その後は年5%程度にスピードダウンする。これは全体から見れば、女性と同等の変化率である。


これらデータから、閉経の時期なんかよりずっと若年で生物学的変化を生じていることが分かるとのこと。


女性においては閉経が動脈硬化の主役であるかごとく、”ホルモン補充療法をアンチエージングとなのり、動脈硬化予防に役立つ”などとするのはもともと無理があったのでは?

by internalmedicine | 2011-09-07 15:04 | 動脈硬化/循環器  

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